long dream@
□蔵馬の秘密
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小兎の合図が出た途端、酎が幽助を殴った。
「おららららららあ!」
バキィッッ
ドコォッッ
血を流しながらひたすら殴りあう二人。
「っ…」
傷つく幽助の姿に未来は目をふさぎたくなったが、彼の命がけの戦いを見なければ、という思いがあった。
二人とも一瞬のスキをうかがっている。
先に動いたのは酎だった。
「くらえィー!」
「出たァ酎のヘッドバット!これで決まりだぜ!」
ガッツポーズの鈴駒だったが。
ゴッッ
二人の頭がぶつかった大きな音が響く。
「へへ…イヤなヤローだ。切り札まで一緒だったぜ…」
倒れた酎を見て幽助は笑う。
二人共頭突きで勝負にでたのだ。
「…8、9、10!勝者浦飯!よって3−1で浦飯チームの勝利です!」
小兎のカウントで、浦飯チームの2回戦進出が決定した。
「よっしゃあー!」
「やったね!」
ハイタッチする桑原と未来。
「幽助、疲れたでしょ?体力回復させるよ。あ、でもひどいケガだから最初に治療した方がいいかな…」
「未来、サンキュー。オレは後でいいからよ、先にアイツの意識覚ましてやってくれ」
幽助が気を失って倒れている酎を顎でしゃくる。
「…わかった」
酎に幽助と近いものを感じていた未来は、素直に従った。
「あちゃー完全にダウンしてる。信じられね〜石盤ぶち割る酎の鉄頭だぜ。それをぶっ倒す生身のヤローがいるなんて。…!?」
酎に駆け寄り、幽助の強さに驚愕していた鈴駒の前に走った一筋の閃光。
それに当たった酎は、むっくりと起き上がった。
「酎!」
呼び掛けたのは幽助。
「約束だ…殺せ…」
「またやろうぜ」
酎に間髪入れず幽助が言った。
「幽助らしいというか…。よし、ワシは一度霊界に帰るぞ」
コエンマはマントをひるがえし、ジョルジュと共に闘技場を去ろうとする。
「未来、先程話したことは誰にも言うな。幽助たちにもな!」
未来の耳元で囁いたコエンマ。
「…はい」
返事をした後、未来は二人の背中を見送った。
一方観客席では、敗北した六遊怪チームに対するブーイングが起こっていた。
「役立たずがくたばれ!」
「賭け金返せバカ野郎」
「六遊怪だと笑わせんな」
「鈴駒も酎も殺せ!」
試合中は応援していたにもかかわらず、打って変わって六遊怪チームに罵倒を浴びせる観客達。
中にはビンや缶を闘技場に投げつける客もいた。
「勝手な奴らだぜ。さっきまであれだけ肩入れしてたくせによォ」
「こっちも気分が悪くなってくるよ」
六遊怪チームと敵であった浦飯チーム側の桑原と未来も、観客達の言動が不快で仕方ない。
「うるせェェェーーー!!」
幽助の大声の叫びに、観客達は一瞬で静まりかえる。
「ぐだぐだ言ってねぇで降りてこいやコラァ。文句あんならオレが相手だ。とことんやってやんぜ」
幽助同様、桑原、蔵馬、飛影、未来、覆面も観客席に冷たい視線を投げかける。
「ぬうう…」
降りて戦うことなど恐くてできない観客達である。
「浦飯…」
目を見開き、呟いた鈴駒。
鈴駒と酎と、幽助たちとの間に、確かな絆ができた瞬間だった。
「未来もさ、ありがとう」
「そうだ、遅くなっちまったが…ありがとうよ、未来」
酎の体力、妖力を回復させた未来に、鈴駒と酎は礼を言う。
「いえいえ、どういたしまして。お礼なら幽助に言って」
鈴駒と酎は観客席にいるような他の妖怪たちとは違うと、未来は確信していた。