long dream@
□秘密と噂
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「幽助は蔵馬のお母さんと会ったことあったんだね。お見舞いに行ったって」
先程の志保利の発言を振り返る未来。
「ああ。霊界探偵の仕事の関係で蔵馬とは知り合ったんだ」
蔵馬、飛影、剛鬼を捕まえるのが初仕事だったと、幽助は当時のことを思い返す。
「蔵馬が霊界から暗黒鏡っていう秘宝盗んでよ、まあそれも母親のためなんだけどな。自分の命と引き換えに死にそうな母親の病気治そうとしたんだぜ、あいつ」
「え…そんな蔵馬のプライベートな話、私聞いちゃってよかったのかな 」
蔵馬に悪いのではないか、と未来は不安になる。
「未来ならいいと思うけどな。じゃあ詳しくはオメーが蔵馬に直接聞けよ」
幽助は未来の気持ちをくみ、これ以上自分の口から言うのは控えた。
「自分の命と引き換えにって…」
なかなかそこまで出来る人はいないだろう。
未来はかなり衝撃を受けていた。
「母親思いなんだよ、あいつ」
「蔵馬は優しいからね…」
未来がこれまで見てきた蔵馬はいつだって優しかった。
だが、蔵馬が母親の命を救うために死ぬことは本当に“優しい”行為だといえるのだろうか。
(私は幽助からほんの少し話を聞いただけだし判断できないけど…。なんか、違う気がする)
未来はモヤモヤしていた。
そんな彼女に気づいた幽助。
「オレも蔵馬に間違ってないか!?って言ったぜ。まあ、あいつも色々考えてて…おっとオメーが蔵馬に聞くんだっけ」
慌てて幽助が口をふさぐ。
「ううん、聞かないよ。もう終わったことだし、蔵馬もお母さんも今元気なんだから私が詮索する必要ないでしょ」
ただ、幽助の言う通り蔵馬がとても母親思いだということはわかる。
(蔵馬みたいな息子がいて、お母さんも幸せだね)
そう信じて疑わない未来だった。
・・・・
コンビニに入った幽助と未来。
「今日はオレが送るからいいけどな、オメーこれから絶対に一人で出かけんじゃねーぞ」
弁当を選ぶ未来を見ながら幽助が再度忠告する。
「わかってる。私は興味深い存在なんだってようやく自覚したよ。幻海師範も私が異世界から来たとか、変な気を使えるとか特殊だから居候認めてくれたのかも…」
確かにあの幻海がただの親切心だけで許可したとは考えにくい。
「オメーに興味持ったんだろうぜ。悪人でも強ければ自分の奥義継承するってほざいてた不良婆さんだしな」
その不良婆さんの弟子である、これまた不良中学生の幽助が言った。
「ゲッ浦飯」
「逃げろっ」
コンビニに入ろうとした中学生数人が、幽助の姿を見た途端急いで出ていった。
カツアゲされてはたまらないと思ったのだろうか。
彼らだけでなく、コンビニの店員も幽助にビビっているようだ。
「ったくなんだよあいつら」
「幽助…何したらあんなに脅えられちゃうの?」
タバコを手にした幽助を、未来は白い目で見ていた。