long dreamB
□SISTER
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「未来、大丈夫?」
「派手に吹っ飛ばされてたな。女に手あげるなんざとんでもねーヤローだ。ありゃ飛影がブチ切れるのも無理ねーが……」
飛影に続いて、蔵馬と幽助まで現れるとは。
驚いている未来の元まで二人は駆け寄ると、今にも男を殺しかねない飛影を横目で見やる。
「た、助けっ……」
半泣きになった男が許しを請うが、飛影が聞き耳を持つわけがなかった。
ドゴッと鈍い音をさせ頬を一発殴ると、倒れた男の腹部を容赦なく蹴り上げる。
「がはっ……」
「足は残してやったんだ。さっさとオレの前から失せろ」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
赤く腫れた頬を押さえ咳き込む男は、何度も謝りながら這う這うのていでその場から逃げていった。
「あいつ一週間はメシ食えねーぜ。ま、殺されなかっただけマシか」
人間相手なのだ、飛影もあれでだいぶ手加減したのだろう。
トラブルがあるとの通報で現れた職員への説明に蔵馬が手こずっている傍ら、一件落着だと幽助が息をつく。
「チッ」
到底おさまらない憤りに苛立つ飛影が舌打ちする。
未来の身体に汚い手で触れた挙句、あろうことか暴力を振るった輩に対しての制裁はあれではぬるすぎるくらいだった。
「飛影、ありがとう」
やり過ぎだよ……と思う未来であったが、自分のために怒ってくれた飛影の行動を今すぐに咎める気にはなれなかった。
「怪我はないか」
「うん、大丈夫。飛影こそ大丈夫なの?火山の噴火を止めに行ってたんじゃ」
見たところ無傷のようで安堵するが、そもそも飛影は魔界で闘っていたはずなのにと未来は首を傾げる。
「安心しろ。もう噴火は終わった」
「ほ、ほんとに!?」
「ああ。魔獄大山は無事鎮静化したよ。もう二度と噴火することはないだろう」
「S級妖怪総動員だったからな。もう心配いらねーぜ」
なんとか職員を追い払った蔵馬と幽助が肯定し、ほっと大きな安堵と喜びが未来の胸に広がる。
「すごいよ、こんな短時間で噴火を抑えるなんて!三人ともおつかれさま!それで、どうしてここに?」
「うーちゃんが教えて連れてきてくれたんです。未来や桑原くんたちがここにいると」
噴火が無事おさまったところで、裏女は蔵馬の前に現れると事情を説明し、遊園地へ連れてきたのだという。
人気の少ない建物の裏手で裏女の口から降り立った蔵馬たち三人は、未来の元へ急いだというわけだ。
「ふ、噴火?というか幽助って……」
その時、ずっとポカンとした表情で傍観していたユキオがおずおずと口を開く。
魔獄大山の噴火は初耳だったようだが、驚いているのはその事だけではないらしい。
「統一トーナメントも映らなかったド田舎のウチでも聞いたことあるぞ……浦飯幽助、妖狐蔵馬、飛影の名前は……」
まさかと狼狽えるユキオが青い顔をして後ずさる。
三竦みの軍でNo.2にまで上り詰めた彼らの噂は、魔界の僻地で暮らすユキオの耳にも届いていた。
「この三人も全員、あなたが雪菜ちゃんの本当の兄じゃないって分かってるんだよ」
「なっ」
「ちなみに桑ちゃんもこの三人と同じくらい強いからね」
未来が述べた衝撃の事実に、ユキオは二の句が告げなくなっている。
「貴様か。ふざけたことを抜かしている奴は」
先ほどまでナンパ男に向けていた殺意に満ちた眼差しが、今度はユキオの白い顔をとらえる。
雪菜の兄と名乗る人物が現れたという話を、飛影も既に幽助と蔵馬から聞いていた。
「あ……あ……」
「大人しく洗いざらい喋った方がキミのためだと思うが」
ジリジリと近づく飛影へ怯え後ずさるユキオへ、静かに蔵馬が告げる。
「ご、ごめんなさい!ボ、ボクは本当は雪男じゃない!雪菜の兄というのも嘘です!」
とうとう白状したユキオを、血管ブチ切れ寸前の怒りにわく飛影がギリッと睨みつける。
しかし己より早く動いてユキオの胸倉を掴んだ人物の登場に、飛影は意表を突かれた。
「今の話、ホントかよ。ああ!?」
「うっ」
内臓が震えるほどの激しい怒りに燃える桑原が、ユキオの胸倉を掴み食ってかかる。
未来とナンパ男の騒ぎを聞きつけやって来たところ、ユキオの告白を目の当たりにしたのだ。
「ご、ごめんなさ……」
「テメーだけは絶対許せねー。雪菜さんの気持ち弄びやがって!」
雪菜の心を傷つけるような行為をしたユキオは、桑原を本気で怒らせていた。
鬼気迫る桑原の姿に、圧倒された幽助、未来、飛影たちは何も口を挟めず棒立ちになっている。