long dreamB

□SISTER
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(また誰かに見られてた!)


確信する未来が、ユキオとの会話を中断する。一体、この品定めするようにまとわりつく視線は何なのか。


「未来さん、どうしたんですか?……とにかく、雪菜の兄はボクなので」


この期に及んでシラを切り続けるらしいユキオに、苛立つ未来は目尻を吊り上げる。
両者の間に流れる険悪な空気がいっそう濃くなった。


「まだ言い張るつもりなの!?」


「なになに、ケンカ?」


未来がユキオを睨みつけていると、見知らぬ男の声が降ってきた。


「ダメじゃん!女の子怒らせちゃ」


え、誰?と未来は訝しげに眉を寄せる。
大学生くらいであろう若い男が、軽薄そうな笑みを浮かべてこちらへ歩み寄ってきた。


「ガキのお守りはやめてオレたちと遊ばない?ケンカ中だったみたいだし、ちょうどいいよね」


「お守り!?」


未来が男に絡まれる傍ら、ガキ扱いされたユキオの顔がショックで引き攣る。


「レストランで見かけてさ、キミともう一人の女の子、可愛いなって思ってたんだ」


先ほどのゾクリとする視線はこいつかと、拍子抜けしつつ未来は腑に落ちる。
桑原がいなくなり、絶好のチャンスとナンパに踏み切ったのだろう。


「私はまだこの子に話があるので」


「そんなガキほっといてさ、おいでよ。一緒に来てた女の子に帰られちゃってさ、今オレ暇なんだ」


「ちょ……離してください!」


キッパリ断った未来の肩を、ナンパ男が強引に抱いた。
懸命に逃れようとする未来だが、男の力には敵わない。


影ノ手を発動させればこんな輩すぐ一蹴できるが、人目の多い場所で闇撫の能力を使うわけにはいかなかった。また、ユキオにはまだ自分の能力を知られたくはない。


「やめろよ!嫌がってるだろ!」


無理やり連れて行かれそうになった未来を見かね、ユキオが大声で叫ぶ。
反抗してきたユキオに、へ〜?と面白そうに男はニタニタと笑った。


「離せよ!」


小さな身体にもかかわらず、ユキオは果敢に男に挑んだ。自分を助けてくれようとする彼の行動に、未来は目を見張る。
しかし、非力な拳が男に届く前に、あっさりと返り討ちにあったユキオは尻もちをついた。


「大丈夫!?」


「ほっとこほっとこ。行こうぜ」


ユキオの元へ駆け寄ろうとした未来の身体を、男はがっちりと掴み離さない。
我が物顔で触れてくる男に、ゾワリとした不快感が未来の全身をはしる。


「離してって言ってるでしょ!」


プチンと堪忍袋の緒が切れた未来が、渾身の力を振り絞り男の腕から逃れる。
暴れた未来の腕が身体に当たって、いっ…!と痛みに男が呻いた。


「なんだこのアマ!」


「きゃっ」


激昂した男に突き飛ばされた未来の身体がユキオの横に倒れる。
地面に投げ出された未来を見て、途端に我に返った男は今さら自分のしでかした行動を理解したかのように青ざめた。


「今の見た?」
「やばくない?」
「女の子が突き飛ばされた」


目撃していた他の来場者たちがそわそわと騒ぎ始め、マズいという表情で男はタラリと冷や汗をかく。


「ご、ごめん。頭に血が上って。やっぱり二人で遊んでるといいよ。じゃあまたね!」


「おい」


そそくさと逃げるようにその場を離れようとした男は、殺気のこもった低い声に金縛りにあったかのように身体を固まらせた。


「貴様、未来に何をした?」


目つきだけで人を殺せそうな冷えた視線に晒されて、男は声も出せず縮み上がる。
目の前の全身を黒い衣装で包んだ少年から浴びるいまだかつて感じたことのないほどの恐怖に、ついには腰を抜かしペタンと尻もちをついた。


「飛影……!?」


どうしてここに飛影が!?
愛する夫の思いがけない登場に、未来は倒れていた身体を持ち上がらせる。
飛影は未来を一瞥しその無事を確認すると、またすぐに刺すような目で男を見据えた。


「殺すだけで許されると思うか」


「ひ、ひぃっ……!」


静かながら強烈な怒気を露わにした飛影が一歩一歩男に近づき、その首根っこを掴む。
殺意を剥き出しにした飛影に迫られ、怯える男は今にも卒倒しそうだ。


「飛影、待って!」


「飛影、よせ!」
「殺すんじゃねーぞ飛影!」


焦って叫んだ未来にかぶせるように、蔵馬と幽助の声が飛んできた。
 
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