long dreamB

□Mazy Triangle
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未来との勉強会から翌日。
雷禅の死の報告を受けた蔵馬は、使い魔に連れられ癌陀羅を訪れていた。


「あ、蔵馬!」


通された和室には既に陣たち六人と共に未来の姿もあり、蔵馬が小さく息を吐く。


「未来、やっぱり来たのか」


「蔵馬、心配しすぎ!私だってそれなりに強くなったんだよ」


闇撫である未来には拘束や監禁といった類の手は無効だし、万一自分で次元の穴を開けられない状況に陥っても裏女が助けてくれる。
主人の言いつけを守り次元の狭間で待機している裏女の気配を、闇撫の未来はハッキリ感じとっていた。


「本当に頼むよ」


懇願するように告げた蔵馬の真剣な瞳に、自分たちを取り巻く緊迫した情勢を感じ未来は射すくめられた。
黄泉への警戒は緩めてはならないと、改めて気を引き締める。


「それにしても、浦飯のヤツ何を考えてるんだろうな」


鈴駒の台詞に、うーんと陣たちが首を捻る。
幽助の返答次第で一気に魔界が全面戦争に突入する今、彼は何を目的に黄泉の元へ訪れるのか。


「それはわかんねーけど、オレあいつと会うの楽しみだべ!」


「早く顔が見てぇな!」


ワクワクがおさまらない陣と酎を、凍矢や鈴木が目を細めて眺めていた。
死々若丸だけは相変わらずの仏頂面であったが。


「私もすっごく楽しみ」


最後に幽助と会ってから、もう随分時が経つ。
当時は今生の別れと思われたが、また彼との再会が叶う喜びを未来は噛み締める。


「全員揃ったな」


ガラッと開いた襖から妖駄が顔を覗かせ、ぐるりと八人を見回した。
ズンズン歩いて部屋の中央に立つと、和やかな雰囲気の彼らの間に割って入る。


「未来以外の七名は隣の部屋で待機せよ。黄泉様が出て来いと命じるまで襖を開けるでないぞ。場合によっては浦飯の処刑命令を出す」


不穏な妖駄の台詞に、ピリリと場の空気が引き締まる。
絶対に幽助を殺させはしないと、決意する未来がぎゅっと唇を真一文字に結んだ。


(幽助も、皆も絶対に守る!)


そのために未来は今日この場へ訪れたのだ。


「未来はこのままここに残って王妃として黄泉様と共に浦飯を迎えるのじゃ」


妖駄に命じられた通り、応接間に残った未来は隣の部屋へ移る蔵馬たちを見送る。


「危険を感じればすぐに逃げ出して」


去り際耳打ちされた恋人からの言葉に、こくりと未来は頷いた。
ピシャリと隣の部屋の襖が閉められ、妖駄によって七人の妖力を隠すための結界が張られる。


「む、浦飯たちが来たようじゃな」


「幽助、久しぶり!」


近づく足音を廊下から妖駄が拾って間もなく、雷禅の国の者であろうつるりとした丸頭の男を横に伴い現れた、懐かしい仲間の姿に未来が破顔した。


「未来!?黄泉と婚約したってホントだったのかよ!?すげー玉の輿じゃねーか!」


しかし、開口一番の幽助の台詞に興が削がれた。


「それ嘘だよ、あくまで偽の妃だから!」


「未来、何をたわけたことを言っておる!」


トップシークレットをあっさり敵国の長にバラしてしまう未来を、冷や汗飛ばす妖駄が叱責する。


「未来の噂を聞いた時は腰抜かしたぜ。オメーもなかなかやるな。黄泉ってそんなに色男なのかよ?それとも遺産目当てか?」


「ちょっと、人の話聞いて!?」


湿っぽい再会は二人には似合わない。
久方ぶりに顔を合わしたというのに、相変わらずの幽助と未来だ。


「これ浦飯、未来は我が国の妃じゃぞ!口の利き方を慎め!」


耳にタコができるくらい未来が聞かされてきた台詞を、今度は幽助へ妖駄が繰り返す。
状況に全くついていけていない幽助の側近・北神は何も口を挟めずオロオロとしている。


「いやー、まさか未来が三大妖怪の一人をオトすとはなあ」


「だから違うって!第一、私が好きなのは蔵馬だもん!」


必死になって否定する様子が面白くて未来をからかっていた幽助だが、予想外の名前が彼女の口から飛び出し目を瞬く。
黄泉との婚約には何か事情があるのだろうとは思っていたが、仲間内での惚れた腫れたなんて寝耳に水の話だ。


「蔵馬ぁ!?……はーん、さてはオメー、蔵馬に会いにこっち戻ってきたな?一体どうやったんだよ?」


幽助の問いに口を開きかけた未来の背後で、ガラリとまた襖が音をたてた。
 
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