long dreamB

□Steal My Girl
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パーティー会場では、黄泉の部下や属国の重鎮たちが宴の開幕を待っていた。
ざっと数百人はいる招待客で会場内はあふれている。


「黄泉様に見初められた未来様とはどんな方なのだろうな」
「国王のお眼鏡にかなうとは」
「闇撫なんて貴重種族、会うのは初めてだ」


話題は本日の主役である未来のことで持ちきりだ。


慣れないスーツに身を包んだ幻海邸で居候中の六人は、会場へ足を踏み入れた途端に飛び込んできたご馳走の並ぶ景色に釘付けになっていた。


「すっげー!」
「うまそー!」
「酒だ!オレに酒を持ってこい!」


豪華な食事に爛々と目を輝かせ、今にも口へ駆け込みそうになっている陣と鈴駒。
飲み放題とあり我を失う酎。


草ばかりの食事、禁酒の毎日だったので無理もない。


「まだ飲み食いするなよ。乾杯の挨拶の後だ」


「おい。少しは慎め。お前らと同類と思われてはかなわん」


騒ぐ三人を凍矢が諭し、死々若丸が恥さらしだと白い目を向ける。


「蔵馬じゃないか!」


ちょうど会場入りした蔵馬を発見し、おーいと鈴木が手を振る。


ダークスーツを召した蔵馬は、周囲に薔薇の錯覚が見えそうなくらい華があった。
その端正な顔には相変わらず影が落とされていたけれど。


「ハチャメチャにいい男だな蔵馬!死々若といい勝負ってとこか!?」


まあオレ様には負けるがな!と豪快に笑う酎。
凍矢の制止もむなしく、両手に酒瓶を持っており既に酔っているようだ。


「蔵馬、久しぶりだな。クリスマスイブ以来じゃないか?」


「ああ。六人とも特訓は順調だったようだな」


『皆様本日はお集まりいただきありがとうございます』


蔵馬が鈴木たちの元へ来たところで、マイクを持った燕尾服姿の妖駄のアナウンスが入る。
隣にはジャケットを着た黄泉が立っていた。


『さっそく御披露目といきましょう。我が国の王妃となる、闇撫の未来です』


妖駄の声と共に玉座の間から登場した未来の姿に、会場中が息をのむ。


青いドレスと白い素肌のコントラストが眩しい。
やや憂いを帯びた表情がまた美しさに花を添えている。


ポテトを刺したフォークを口元に持っていったまま、陣は大口を開けて固まっていた。
嫌味の一つでも言ってやろうと考えていた死々若丸も言葉を失っている。


「未来……すっごく綺麗!」


やっと声を出せた鈴駒が、熱を込めて叫んだ。


「美しい……!美しすぎるぞ未来!」


暗黒武術会の際のピエロちっくに鈴木も絶叫する。


「ズルいぞ黄泉ィ!オレだってフリでいいから未来と結婚してみたいモンだぜ!」


「酎、そりゃマズイだ。極秘事項らしーからな」


酔っ払う酎の口を陣の手が塞ぐ。


「ほんと男の風上にも置けない奴だよ黄泉は!闇撫を抑止力として活用するためなんて建前で絶対下心の塊だろ!未来はオイラのだぞ!」


「お前の女でもないだろ」


小声で地団駄を踏む鈴駒に死々若丸がツッコむ。


「なんとお美しい」
「あの美貌で闇撫とは天は何物も与えたものだ」
「さすが黄泉様。お目が高い」


招待客たちも未来を絶賛だった。


「……蔵馬」


そして蔵馬もまた、未来の美しさに惹きつけられている一人だった。
壇上の彼女に目を奪われている彼へ、静かに凍矢が声をかける。


「ここ最近、未来はずっと元気がなかった。今のお前と同じ顔をしていたぞ。未来は何も言わないが、お前と何かあったんじゃないかと思ってな」


二人がすれ違ってしまったとすれば、それはきっとお互いを想うが故だ。
確信する凍矢が語りかける。


「蔵馬……後で未来とちゃんと話してこい。お前の光は未来なのだろう?」


二人には対話が必要だと凍矢は感じていた。
この男の求める光は誰なのか、一戦交えた時から知っているつもりだ。


「ああ。……オレは今日ケリをつけるためにここへ来た」


そうキッパリ述べた蔵馬の鋭い眼光からその意志の強さと、好戦的な妖狐の影を凍矢は感じ取る。


「……そうか」


心配は無用のようだなと、悟った凍矢が口角を上げた。


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