long dreamB

□Paradoxな君
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「よければ未来さんの口から全て説明してくれないか。オレが話すより蔵馬も納得するだろう」


「え……」


黄泉に促され戸惑うも、いずれにしろ早く蔵馬に話すべきだと未来は思い直す。
空を黄泉が排除してくれたこと、闇撫を抑止力として活用するため偽装結婚を持ちかけられたことを未来が手短に語った。


「鯱に手出しされる心配はなくなるし、蔵馬の家族がもう二度と人質にとられなくなるから、この提案にのったんだ」


そうやって黄泉は未来を言いくるめたのか。
事の経緯を知った蔵馬は一層苛立ちを募らせるが、黄泉は涼しい顔をしている。


「ていうか蔵馬、私が空に寄生されてたの知ってたの?」


「……ああ。未来はいつ気づいたんだ?」


「もしかして誰かに取り憑かれてるのかなと疑ってはいたけど、さっきこの目で空を見るまで確信はしてなかったよ」


「だから真偽を確かめるために癌陀羅へ行ったのか」


己の読みの甘さに、蔵馬は頭を抱える。


そうだった。
空の存在に気づいたところで未来は取り憑かれる恐怖にただ怯えるのではなく、解決しようと身体が先に動いてしまうような少女だった。


「うん。闇撫の能力で魔界へ穴を開けられるようになったから……」


「自分がどれだけ危険なことをしたか分かっているのか!?オレがあと九日で全て解決するつもりだったのに……!」


悔しげにこぼした蔵馬に、未来が目を見張る。


「どういうこと……?」


「あと九日で六人全員の妖力値が十万を超えるとお前は読んだわけか」


困惑する未来とは対照に、黄泉は蔵馬の発言の意図を理解したようだ。


「鯱を始末しても、何の実績もない現状では空は命令を聞かない上、謀反の罪に問われる。育てている六人の妖力値が十万を超え、己の地位を確立するまでは下手に動けない……おおよそこのように考えていたんだろう」


蔵馬がこの三週間静観していた理由を瞬時に推測した黄泉が、ズバリ言い当てる。


「余計なことをしてくれるなという口ぶりだが、身の異変に勘付き藁にもすがる思いでここへ来た未来さんを責めるのは酷というものだ」


「ごめん、ちょっと黙っててほしい!」


黄泉に肩を持たれても余計話が拗れそうだと感じ、要らぬ世話だと制する未来。


「ひどいな、せっかく妻を庇ってやったのに」


「妻って、偽だからね!?」


「まあそう落ち込むな。王妃になったことでこれ以上ない程未来さんの安全は確約されたんだ。二度とお前の家族を人質にとらないと誓ったしな」


念を押す未来を無視し、お前にとって悪いことばかりではないはずだと黄泉が蔵馬を諭す。


「未来さんにも指一本触れはしない。そういう契約だからな。彼女から迫られたら別だが」


「はあ!?」


迫るわけないでしょうが!と憤慨する未来の反応が予想通りで黄泉が笑った。


いつの間に黄泉と軽口を叩き合えるようになったのか。
敬語もなくし臆することなく黄泉と接する未来の姿が、蔵馬をまた沈ませる。
 
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