long dreamB

□Innocent Love
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「ところで、皆こそどうして師範の家にいるの?」


「オレが呼んだんだ。黄泉軍の戦力としてね」


答えた蔵馬に、ドキッと未来の胸が跳ねる。


半年で妖力値10万以上を目指すべく、六人は幻海邸で特訓しているのだと蔵馬は説明した。


(蔵馬は…めちゃくちゃいつも通りだな…)


声を聞くだけでこんなに動揺してしまう自分とは違い、蔵馬は至極普段通りで悔しい。


(そりゃあ告白されたの半年前だし、今は私の片想いだよなあって思ってたけど…)


でも。
あんな風に抱きしめられたら。


「未来」


先ほどの抱擁を思い出し、未来の頬がほてる。


「未来?」


「は、はい!」


二回目の呼びかけで、心ここにあらずだった未来がやっと蔵馬に返事をした。


「ちゃんと聞いてた?」


「き、聞いてた!私がいなかった半年間で、情勢はまだ変わってないってことだよね」


「…ああ。だが近いうちに雷禅が死ぬ」


慌てて取り繕った未来を、蔵馬がそれ以上追及することはなかった。


(くそう。かっこいいぞ…)


見とれて上の空になってしまうくらい、もう未来は蔵馬に惚れているのだ。


恋心を認めてしまえば、平常心を保ったまま蔵馬と会話できていた昔の自分が信じられなくなる。


「その時に、魔界は大きく動くと思う」


黄泉、雷禅、軀。
今まで均衡のとれていた三者のバランスが崩れる日はすぐそこまで来ているのだと、蔵馬は語った。


「コエンマ様、大変です!未来が帰ってきたらしいんです!」


突如として開けられた玄関扉から飛び込んできたのは、ぼたんをはじめ霊界からやって来た三人組だ。


「特防隊は怒るというよりショック受けてますよ、未来のことがあって結界を強化したのにって。とにかく早く未来を見つけなきゃ、」
「異次元間の結界を未来さんが通り抜けた反応があって。特防隊のプライドはズタズタです。未来さんは今どこにいるのでしょうか、ジョルジュ心配で、」


「同時に言うな!聞き取れん!」


一刻も早く伝えなければと、思いつくままに喋っているぼたんとジョルジュ早乙女をコエンマが制する。


「未来さん、おかえりなさい」


その脇を通り過ぎ、真っ直ぐ未来の方へ向かってきたのは雪菜だった。


「雪菜ちゃん、また会えてよかった!ほら、もらった氷泪石こうして首に下げてるよ」


「嬉しいです。身に付けてくださっていたんですね」


半年前、別れの際に雪菜からもらった氷泪石を未来はずっとネックレスとして首から下げていたのだ。


「えーー!!未来!?」
「未来さん、いたんですか!?」


「気づくのが遅いぞ」


今さら腰を抜かしている二人にコエンマがツッコむ。


「未来、本当に未来なんだね!?よかった、無事にここに着いてて!」


「ぼたん、ただいま!」


未来の両頬を確かめるように触ると、抱きつくぼたん。


「本当に未来、よく帰ってきたな。さて、今後の未来の身の振り方を考えるか」


再会を喜び合うぼたんと未来に目を細めつつ、霊界の統治者らしくコエンマが場を仕切る。


「未来はまたうちに身を置くべきだろうね。ちょうど六人のための結界があるから、ここなら安全だよ」


「ワシもそう思う。未来がまたトリップできたのは結界を張っていた特防隊の過失。特防隊には未来を傷つけぬよう強く命じておくが、奴らが了解したとしても信用しきれんからな」


コエンマも幻海と同意見だ。


霊界特防隊が未来の命を狙ってくる危険性があるため、彼女には結界が張られ安全な幻海邸の中で過ごしてもらいたい。


「未来、外出はオレと一緒の時だけにして下さいね」


「うん…わかった。蔵馬、ありがとうね」


自分の身を案じてくれている皆の気持ちを無下にしないためにも、一人での外出は避けるべきだと未来も思う。


(じゃあ、外出を口実に蔵馬と一緒に出掛けられるってこと…?)


不謹慎にも、ラッキーと思ってしまったことは許してもらいたい。 


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