long dreamB

□Innocent Love
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「ただいま!」


朗らかに告げると同時、翡翠色の瞳と目が合って息が止まる。


まさかこんなすぐに再会が叶うなんて。


(うそ…)


てっきり幻海が現れるかと思いきや、一番最初に未来を出迎えた、玄関扉を開けた人物は蔵馬だった。


「未来…?」


唐突な再会に信じられない気持ちでいるのは蔵馬も同じようで、大きく開いた瞳に未来を映して離さない。


「うん」


「本当に?」


「そうだよ」


本当は聞き返さなくてもよいほどに、目の前の彼女の姿や微かな妖気は懐かしく、蔵馬が恋い焦がれていたものだった。


「さっき帰ってきて…」


言い終わる前に、引き寄せられて閉じ込められる。


包むように優しく、けれど絶対にもう離さないという意志をもって蔵馬が未来を抱きしめた。


「おかえり」


耳元で小さく告げられて、未来の涙腺が緩む。


抱きしめられて伝わる体温。
ほんのり香る薔薇の匂い。


自分が求めていたものは、欲しくてたまらなかったものはこれだったのだと実感して。


「蔵馬。……ただいま」


蔵馬の背中に手を回し、その温もりが夢でも幻でもないことを確かめる。


(夢みたい…)


鳴り止まない胸のドキドキは、きっと蔵馬に伝わってしまっているだろう。


「蔵馬、遅いよー!」
「誰だったんだべ?」


こちらへ駆けてくる足音が聞こえて、蔵馬の腕の中で未来は身体をこわばらせた。


(皆が来ちゃう!)


焦る未来だが、蔵馬は腕の力を解いてくれない。


「く、蔵馬、離して」


「やだ」


「え、ええっ…!?」


駄々をこねた子供みたいな言い方に未来があたふたしていると、クスッとからかうような笑い声を漏らして。


「あー!未来!」


鈴駒たちに気づかれる間一髪のタイミングで、未来を解放した蔵馬である。


「蔵馬…!心臓に悪いよ!」


顔を赤らめた未来が小声で責めるが蔵馬に悪びれる素振りはなく、ただこちらを向いて微笑んでいる。


(うわわっ…)


その表情がとても優しくて、また顔に熱が上ってきそうな気配を感じた未来は慌てて彼から視線をそらした。


「未来だって!?」


鈴駒の声を聞きつけ、居間に残っていた他の者たちも玄関まで駆けつける。


「わーい!未来だーっ!」
「未来だべ!会いたかったっちゃ!」


「鈴駒、陣…!わっ」


鈴駒が走ってきた勢いに任せ未来に飛びつき、二人まとめて陣が抱きしめる。


「だっはっは!未来が帰ってくるとはな!」
「最高のクリスマスプレゼントだ…!」


団子になっている三人を見て、酎が豪快に笑い、鈴木は感極まっている。


「こらこら、その辺にして未来を解放してやれ」


はあいと凍矢へ返事をして、鈴駒と陣は未来から離れた。


「未来、どうしてここにおるのだ!?」


「実は死出の羽衣を被ったら…」


開いた口が塞がらない様子のコエンマが訊ねれば、未来はかくかくしかじかと事のあらましを簡単にまとめて話す。


「え〜!?吏将と爆拳に会ったんか!?」
「オレの作った羽衣がそんなに役立っていたとは…!」


合間に漏らされた皆の反応は様々だった。


「なるほど、あんたがここに戻ってきたのは鈴木と死々若丸のおかげってわけかい」


「そうですね!鈴木、ありがとう。死々若にも今度会ったらお礼言っといてね」


「何言ってるんだ未来。死々若ならここに…」


鈴木が言い切る前に、未来は彼の肩に乗った手の平サイズの子鬼の存在に気づく。


「わー!可愛い!何この子、鈴木のペット?」


「なっ…誰がペットだこのバカ女!」


「うわ、喋った!鈴木、ちゃんと躾しとかなきゃ。こんな暴言吐くのよくないよ」


あまりの言われように、子鬼は怒りでわなわなと震えている。


「未来、悪かった。ペットの教育不足は飼い主であるオレの責任だ」


「誰が貴様のペットだ!?」


「いだだだ、死々若、めっ」


一瞬のうちに子鬼の姿は消え、代わりに死々若丸が鈴木を羽交い絞めにしていた。


「えー!?あの子鬼って死々若の変身だったの!?」


未来が驚愕し、ドッと場に笑いが起こった。


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