long dreamB

□Summer Lover
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皆それぞれ水着を購入し、一同はショッピングモールを出る。


「もうすっかり夏だね。はー、また霊界が忙しくなる時期がやってくるよ」


太陽の日差し眩しい道すがら、ぼたんがぼやく。


「それってお盆のことですか?」


「そうそう。魂が現世とあの世を行ったり来たりで霊界は毎年てんてこまいだよ」


「人間界もお盆の時期は霊でごった返してるもんね」


「雪菜ちゃんもまだ霊界にいるんだよね?」


前を歩く三人がお盆の話題に盛り上がる中、未来は隣を歩く雪菜へ話しかけた。


「はい。お盆の時期は私もお手伝いして協力したいと思います」


「そっか、えらいね!」


「いえ、いつもお世話になってるのでこれくらいは」


雪菜が兄を探すための拠点を人間界から霊界へ移して、一年ほど経つ。


「もう魔界へ戻る気はないので」


雪菜の発言に、目を見張る未来。


もう雪菜は二度と氷河の国へ戻る気はないということだろう。


(雪菜ちゃんは、やっぱり飛影のこと気づいてるんだろうか)


兄の正体が分かっているような素振りは見せても、決定的な言葉を雪菜が口にすることはなかった。


(兄だと怪しんでなきゃ、母親の形見なんて飛影に預けないと思うんだけどな…)


他人の親の形見なんて重いものを、躊躇わず受け取った時点で自分が兄だと名乗ったようなものなのに、どうやら飛影はその事に気づいてないようだった。


「二人とも早くー!」


未来が物思いに耽っていると、前を歩くぼたんに急かされた。


「あ、ごめん!」
「すみません!」


だいぶ三人と距離があいてしまっていた未来と雪菜が慌てて追いつく。


「今さ、まだトーナメント続いてるのかねって話してたんだよ」


「あれ、ぼたんコエンマ様と一緒に魔界へ観戦に行ってたんじゃないの?」


コエンマとぼたんに観客席で会ったと、飛影から聞いていた未来が訊ねる。


「それがね、未来が瘴気の毒で倒れたの見たら自分たちの身も心配になってさ…。幽助の一回戦終わったら帰ったよ」


霊界出身の者は瘴気に耐性があると言われてはいるが、実際に倒れた人間を見ると不安になったコエンマとぼたんは、早めに魔界を離れる決断をしたという。


「幽助、勝ってました?」


「圧勝だよ!」


グッとぼたんが螢子へ親指を立てる。


「あれから幽助どこまで勝ち進んだかね〜」


「明日、飛影に会うから聞いてみるね」


魔界で観戦している飛影なら、トーナメントの状況を知っているだろう。








「幽助が24時間以上黄泉と戦ってる!?」


次の日、待ち合わせ場所である皿屋敷市内の小さな公園にて、思わぬ飛影の発言を復唱する未来。


「ああ。まだ長引きそうだったぜ」


「は〜…すごいね。底なしの体力だわ…」


ちなみに飛影は未来が裏女に頼んで魔界から人間界まで連れてきてもらった。


おそらく幽助あたりに見繕ってもらったのだろう、飛影は水着やタオルの入ったプールバッグを下げている。


水を弾く眼帯まで売っていたらしく、魔界には便利なものが揃っているものだと未来は驚いた。


「じゃ、行こっか。プールワールドはね、ここから歩いて10分くらいだよ」


目的地であるプールワールドは、プールの他に温泉、岩盤浴、ジムが揃った大型レジャー施設である。


屋内プールなので肌が焼けないところが未来的に嬉しいポイントだ。


「しっかし24時間以上とは…。さすが魔界全土を巻き込んだ大会はスケールが違うね」


「三回戦はそんな戦いザラだったぜ。レベルが上がるにつれ実力が拮抗してくるからだろうな」


「ええ、そうなの!?まあ、三回戦まで勝ち残った人は猛者ばっかだろうしね」


他愛ない会話をしながら、プールまでの道のりを並んで歩く。


飛影と話しつつ未来が頭の片隅で考えるのは、服の下に着てきたビキニのことだ。


結局未来は白いブラに水色を基調とした花柄のボトムの、あのビキニを選び購入していた。


(緊張してきたな…。変じゃないかな!?)


お腹常に力入れて引っ込ませようかな、などと無謀な試みを真面目に考えてしまう未来なのだった。


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