long dreamB

□未来
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一年ぶりの再会だ。
聞きたいこと。話したいこと。確かめたいこと。
たくさんある。


でもいまはいい。
互いの体温と、好きの言葉があればいい。



ふたりきりの室内で、会えなかった時間を埋めるように何度もキスを交わす飛影と未来。


未来はもう、飛影のことだけしか考えられなくなる。



飛影のことだけ。
飛影の……



……ん!?



そこで重大なことに気づいた未来が、飛影の両肩を掴み唇を離した。


「未来?」


キスを中断され、ちょっと…いやかなり不満げな飛影である。


「飛影!試合!」


唐突に未来に告げられ、きょとんとする飛影。しばらくして「あ」という顔になる。


「飛影の試合って、Dブロック四試合目だったよね!?」


未来と軀の試合は、Dブロック二試合目だった。
あれからどれくらい時間が経ってしまったのか……恐ろしくて考えたくもない。


「早く会場行かないと!」


「もう今から行っても間に合わん」


急かす未来だが、既に飛影は諦めているようだ。


「もしかしたら三試合目がすごく長引いてるかもしれないし、とにかく会場へ行こうよ!」


「未来、この部屋から出る気か?」


瘴気が充満している場所への外出など、飛影は到底許すことができない。
倒れた未来を目にして、どれだけ肝を冷やされたことか。


「ちょっとくらいなら大丈夫だから〜!」


「駄目だ」


お互い譲らず攻防を続けていた二人だったが、最終的には未来の熱意に飛影が折れたのだった。





会場へ戻ってきた飛影と未来は、参加者の群れにストレッチ中の幽助を発見した。


「未来!軀から聞いたぜ!もうすっかり良くなったんだってな!」


小兎からマイクを借りた軀は、未来の治療は成功したと会場中にアナウンスしたのだという。
鈴駒や鈴木など泣いて喜んでいたらしい。


「おかげさまで!ところで幽助、飛影の試合は…!?」


「飛影の試合?もうとっくに過ぎちまったぜ」


三試合目が長引いているかも。
いちるの望みにかけて会場へと向かった未来だったが、幽助から告げられたのはそんな無情な一言だった。


「オレらも運営に飛影の試合の延期頼んだけどよ、認められないの一点張りだったわ」


「そんな!嘘でしょ!?飛影が不戦敗だなんて…!」


がっくりとうなだれる未来は、あまりのショックにへなへなと座り込んで宙を仰ぐ。


「未来の奴、どこ見てんだ?」


「呆けてやがるな」


茫然自失とはこのことだ。


「おーい、未来?」


眼前で幽助が手を振り、ハッと我に返った未来が立ち上がる。


「ごめんね飛影、私のせいで…」


深々と飛影に頭を下げた未来。


「もういい。次の大会で優勝すればいいだけの話だ」


「でも…でもさあ、私、悔しいし申し訳なさすぎるよ!飛影が試合に出られなかったなんて…」


飛影は割り切っているが、彼のチャンスを奪ってしまい未来は何回謝っても心が晴れなかった。


「まさか飛影が一回戦敗退とはな…」


「うう……」


幽助に追い討ちをかけられた未来が、ますます肩を落としていく。


「つーか未来、脅かしやがって!軀と対戦したかと思ったらいきなりぶっ倒れてよー」


「ごめんなさい…」


瘴気の毒について失念していたのは完全な自分のミスだと、未来は気落ちする。


「幽助と蔵馬、助けに来てくれたよね。覚えてるよ。心配かけて本当にごめんね…」


本当に申し訳なさそうに、しょぼんとしてしまった未来を見て、責めていた幽助の心も痛む。


「ま、未来が助かったからいーんだけどよ。気にすんな!」


まさか偽名を使って大会にエントリーするとは。
たまに未来のしでかす突飛な行動に、幽助は驚かされるのは勿論だが楽しまされもしてきた。


ポンポンと優しい手つきで幽助が未来の肩を叩いて慰めてやると。


「幽助、触るな」


間髪入れず、尖った飛影の声が割って入ってきた。


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