long dreamB

□Missing
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幽助によって魔界統一トーナメントの開催が宣言された翌日、皿屋敷市内のレストランにて。


「明日自分の世界に帰る!?」


突然立ち上がって大声で叫んだリーゼントの青年に、周りの客たちが何事かと振り返る。


「うん。闇撫の力磨いて、もうあっちの世界と自由に行き来できるようになったから」


「サラッとだいぶすげーこと言ってるって気づいてるか?」


フルーツパフェをつつきつつ、あっけらかんと述べた未来に桑原は多大な衝撃を受けている。


「へー。全然そんな才能があるようには見えないのにね」


「すごいな。修行を始めてからまだ三カ月足らずだろ?」


これまたサラッと失礼な発言をする天沼に、感嘆する御手洗。


今日は以前約束した通り、桑原と御手洗の合格祝賀会を未来が開いたのだ。ちゃっかり天沼も同席している。


「鈴木はもちろん、うーちゃんのおかげもおっきいんだ!」


とっくに師匠・鈴木を追い越し、闇撫としての能力を開花させていた未来が誇らしげに胸を張る。


「うーちゃん?」


「樹のホラ、裏男とかいうペットいたろ。あれの女バージョンの妖怪が未来ちゃんに懐いててよ、裏女だから名前はうーちゃんだと」


小首をかしげた御手洗に桑原が囁く。


あの気味悪い妖怪には全く似合わない可愛い名前だというのが、正直な桑原の感想である。


「すっごい可愛くて優しくて、良い子なんだよ」


「今その妖怪どこいんの?」


裏男を知らない天沼は、未来の言葉で可愛らしい妖精のような容姿を想像してしまっているようだ。


「次元の狭間を散歩中か、お昼寝でもしてるんじゃないかな」


「えー、見てみたい!」


今ここに呼んでよ!と天沼にせがまれ、困り顔の未来。


「お店でうーちゃん呼んだら周りのお客さんビックリさせちゃうよ」


「どうやって呼ぶんだ?」


この何気ない御手洗の質問が、店に大パニックを起こすことになる。


「簡単だよ。うーちゃんおいで!って言うだけで…」


瞬間、ずおっと大きな影が四人を、いや店全体を包んだ。


キャーッと甲高い女性客の叫び声と、あちこちで皿やコップを落とす音が響く。


「こ、これが…」
「うーちゃん…ね」


想像とは正反対の容姿に、天沼の顔は引きつっていた。なんとなく予想はできていた御手洗も圧倒されている。


「うーちゃん!今のは呼んだんじゃないの…!ごめんね、早く戻って!」


焦る未来が手を合わせれば、裏女はすぐさまその姿を消した。なんとも出来た僕である。


跡形もなく怪物の姿がいなくなり、客たちは今のは幻?と狐につままれたような顔をしている。


「あのよ…未来ちゃん、あっちの世界に帰る時、あいつも連れてくのか?」


店内が落ち着くと、恐る恐る桑原が訊ねる。


「そのつもりだよ。うーちゃんが寂しがっちゃうもん」


「またこんな風にあっちでパニック起こすんじゃねーのか!?」


「私の家や次元の狭間で過ごさせるから大丈夫だよ」


不安の残る桑原だったが、まあ未来がそう言うならと何も反論しないでおく。


「私が異世界に行ってたって話みんな半信半疑だったけど、さすがにうーちゃん見たらお母さんたち信じるでしょ!」


家族にだけは全てを打ち明けていた未来。
裏女を同行させるのは、異世界や妖怪の存在を家族に信じさせるためでもある。


「お母さんたち、すごく心配してるだろうし。そろそろ復学しないと、本格的に私の将来ヤバいからね。早く帰らないと」


「で、ちゃんとこっちに戻ってくるんだろーな?」


「当たり前でしょ!」


ジロリと訝しむような視線を桑原から送られ、間髪いれず未来が答える。


「次来るのは魔界統一トーナメントの日になると思う」


「未来も観戦に行くのか」


約百日後に魔界全土を巻き込んだトーナメントが開催されると、先ほど桑原と未来から御手洗も聞いていた。


「なんたって飛影が出場するもんな!観に行かないわけにはいかねーよな!」


広い魔界で飛影を探すのは不可能に近い。
しかし、飛影なら絶対にトーナメントに参加するはずだ。
つまりトーナメント開催日に会場に行けば、飛影との再会は実現する。


飛影と未来の感動の再会の日は近いと、確信する桑原が彼女を茶化す。


「…まあね」


未来の返答に少し含みがあったことに、秘めた思惑に。
桑原も、その場にいた誰も気づかなかった。


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