long dreamB

□Xデーは14日
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「大っ成功〜!らんららんらら〜ん」


語尾に音符マークがつきそうな独り言を口ずさみながら、廊下を歩く未来。


なんやかんやあって生贄となってしまった酎の、庭から居間への転送に成功した未来は上機嫌だった。


今まで自分や物体を次元間の穴へ通して転送したことはあったが、初めて他人を被験者に成功したのだ。この経験は、未来に大きな自信をつけた。


(もっと、もっと大きくて強い穴を開けられるようになれば、魔界や元居た世界への入り口だって作れるようになるかもしれない)


当初は無謀だと思えた計画にも、ようやく一筋の光が見えてきた。


(そうしたら、飛影に会いに行ける)


飛影を思うだけでドキドキと高鳴る心臓に、ああ自分は本当に彼のことが好きなんだなあと感じる。


そして、それがとても嬉しい。
飛影のことを好きだと自覚する度に、胸がくすぐったくなって…嬉しくなる。


(早く会いたい。別れてからもう半年以上経つよ)


思い焦がれる相手は遠い魔界にいる。
飛影に早く会いたいという一心で、未来は身を粉にして修行を頑張ってきた。


(でも…魔界に行けたとして、どうやって飛影を探せばいいんだろう。妖怪から身を守る術も私にはないし…)


しかし、飛影に会うためには大きな壁と障害が立ちはだかっているのだと、未来は元日に交わした蔵馬との会話で気づかされた。


悩んだところで解決の糸口は見つからず、未来はひたすら闇撫の能力を極める修行に精を注ぐしかないのが現状だった。


はあ、と溜息をついたところでコール音が聞こえ、未来は電話が設置してある玄関付近へと急ぐ。


「はい、もしもし」


『はーい、未来ちゃん元気?』


「静流さん!?」


電話をとって聞こえたのは、意外な人物の声だった。


『未来ちゃん、突然だけど明日空いてる?カズも連れて遊びに行っていいかな』


「あ、はい!嬉しいです!」


日夜修行に明け暮れるだけの変わり映えのない毎日だったため、桑原姉弟の訪問を喜ぶ未来。


「でも桑ちゃんいいんですか?受験もうすぐなのに…」


『未来ちゃんに渡したいものがあって…。自分も行く!ってカズも言ってるからさ。未来ちゃんは気にしないで!』


そうして明日の訪問日時を約束した後、電話をきった未来は首を捻る。


(渡したいものって何だろう?)


全く見当もつかなかったが、とにかく明日、二人に会えることを楽しみに思う未来だった。



そして翌日。
ピンポーンと呼び鈴が鳴り、未来は玄関まで急ぐ。


「よーっす未来ちゃん!」
「未来ちゃん、久しぶり」


「桑ちゃんに静流さん!」


玄関扉を開けた未来が迎えたのは、桑原姉弟だけではなかった。


「それに…蔵馬!?」


「どうも」


元日の一件以来、未来は蔵馬に申し訳なく、たまに陣たちの様子を伺いに来る彼と顔を合わすのは非常に気まずかったが、努めて普通に接するようにしている。


もしかしたら無理をしているのかもしれないけど、蔵馬の態度も普通すぎるくらい普通だ。
ある変化を除けば……。


「今日も陣たちの修行の様子を見に来たの?」


「いや、これの内容がオレも気になってね」


そう言って蔵馬が指差したのは、桑原が手にしている手の平サイズの球体。


「何これ?」


「言霊ですよ。軀から未来宛ての」


軀から。


予期していなかった名前に、トクトクと未来の脈は速くなる。


だって軀は、飛影とつながる鍵となる人かもしれなかった。


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