long dreamB
□彼のやり方
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飛び込んできたのは、ぼたんをはじめ霊界からやって来た三人組だ。
「特防隊は怒るというよりショック受けてますよ、未来のことがあって結界を強化したのにって。とにかく早く未来を見つけなきゃ、」
「異次元間の結界を未来さんが通り抜けた反応があって。特防隊のプライドはズタズタです。未来さんは今どこにいるのでしょうか、ジョルジュ心配で、」
「同時に言うな!聞き取れん!」
動揺して思いつくままに喋っているぼたんとジョルジュ早乙女を、コエンマが制する。
「未来さん、おかえりなさい」
その脇を通り過ぎ、真っ直ぐ未来の方へ向かってきたのは雪菜だった。
「雪菜ちゃん、また会えてよかった!ほら、もらった氷泪石こうして首に下げてるよ」
「嬉しいです。身に付けてくださっていたんですね」
半年前、別れの際に雪菜からもらった氷泪石を未来はずっとネックレスとして首から下げていたのだ。
「兄を探すため霊界に行っていたんですけど…未来さんが戻ってきたと聞いて、居ても立っても居られなくて」
雪菜が言った“兄”の言葉に未来の瞳が小さく揺れる。
「あ…そういえば雪菜ちゃん、お兄さんを探す拠点を霊界に移すって前に言ってたもんね」
ドキリとした。
雪菜が探している相手は、未来がまたこの世界に戻りたいと願った理由そのものだったから。
「えーー!!未来!?」
「未来さん、いたんですか!?」
「気づくのが遅いぞ」
今さら腰を抜かしている二人にコエンマがツッコむ。
「未来、本当に未来なんだね!?よかった、無事にここに着いてて!」
「ぼたん、ただいま!」
未来の両頬を確かめるように触ると、抱きつくぼたん。
「本当に未来、よく帰ってきたな。さて、今後の未来の身の振り方を考えるか」
ぼたんと未来の抱擁に目を細めつつ、霊界の統治者らしくコエンマが場を仕切る。
「未来はここに身を置くべきだと思います。幸い今ちょうど六人のための結界が張られていますし」
「ワシもそう思う。未来がまたトリップできたのは結界を張っていた特防隊の過失。特防隊には未来を傷つけぬよう強く命じておくが、奴らが了解したとしても信用しきれんからな」
コエンマも蔵馬と同意見だ。
霊界特防隊が未来の命を狙ってくる危険性があるため、彼女には結界が張られ安全な幻海邸の中で過ごしてもらいたい。
「未来、外出はオレと一緒の時だけにして下さいね」
「わかった。蔵馬、ありがとうね」
自分の身を案じてくれている皆の気持ちを無下にしないためにも、一人での外出は避けるべきだと未来も思う。
「特防隊は未来を元の世界へ返すためのエネルギーを貯めようと、また躍起になるだろうな」
そのエネルギーを集める器となる、口元のおしゃぶりに手を当てコエンマが思案する。
「コエンマ様。でも私、またこの世界に戻ってきたからには滞在中に、特防隊の力なんて借りずに自由に異世界間を行き来できる能力を身に付けたいんです」
「闇撫の能力を極めるということか?そのためには樹の言っていた“師”とやらを探さねばならんが。まさか魔界へ行く気か?」
「場合によってはそれも厭いません」
「駄目だ。危険すぎる」
未来が危険な魔界に行くなんてもっての外だと、間髪入れず蔵馬が述べる。
「魔界を探すのはオススメしないな。未来が単身で行くには物騒すぎる場所だ。まあいざとなれば、また死出の羽衣を使ってここに来ればいいだろう」
「死出の羽衣…」
凍矢の台詞がきっかけで、未来の頭に名案が浮かんだ。光が見えた気がして、口元がニヤつくのを抑えられない。
「そうだ!鈴木、私の師匠になってよ!」
「い!?」
突拍子もない未来の頼みに、すっとんきょうな声をあげる一同なのだった。