long dreamA
□意外な再会
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コートは脱いだものの、部屋着に着替えず制服であるセーラー服姿のままバスケットを漁る未来。
(懐かしいな〜)
写真立てに飾ったのは五人で撮った一枚だけだったが、他の写真はフォトアルバムに入れてまとめていた。
螢子や静流、コエンマなど仲間たちと映る魔界の穴の事件の打ち上げで撮った写真を、アルバムをめくり未来は眺める。
夢中になっていた未来は気づかなかった。
ちょうど真上のラックにかけていた死出の羽衣が、ずり落ちていることに。
(あっ…!)
焦って気づいた時にはもう遅く、未来の視界は一面白で覆われていた。
「…あれ……」
しかし、何も起こらない。
死出の羽衣に包まれてもなお、未来は自分の部屋にいる。
被っていた死出の羽衣を、無言で取って見つめる未来。
「なんにも起こらなかった…」
しばらくして、ポツリと一人こぼした。
死出の羽衣を被れば暗黒武術会の闘技場に行ける。
そんな希望が、今あっさりと打ち砕かれたのだ。
ホッとすべき場面だとは分かっている。
全く知らない別の異世界に行ってしまう危険性だってあった。
「あははは、バカだな〜、私!そんな上手くいくわけないじゃん!霊界の人も二度と私が来れないように結界を強めるって言ってたのに」
大きな明るい声で独り言を述べ、滑稽な自分に呆れ笑う未来。
しかし、次第にその笑い声は小さくなっていく。
羽衣を床に置き、ふいに写真立てを取って四人の仲間を見つめた。
(もう会えないんだ、一生)
残酷な現実が、未来を押しつぶしていく。
離れていても、皆の存在は勇気をくれる。頑張る力をくれる。
そう思ったのは嘘じゃない。
けれど、会おうと思えば皆に会えると思えたからこそ、未来は今まで元気にやってこれた節があった。
……ポタ。
頬を伝って流れた一滴が、写真立てに落ちる。
五人で撮った集合写真は、未来の涙で濡れていく。
「…うっ…」
写真の中の“彼”の姿を目に止めた途端、胸が張り裂けそうになって…嗚咽が止まらなくなった。
確信できる。
この気持ちを何と呼ぶか。
ああ。最悪だ。
終わってから気づく。
どうして失ってからでないと自分は大切なものに気づけないのだろう。
でも、あの時どうすればよかったのだろう。
霊界からは命を狙われ、家族の問題もあって、自分は帰る以外の選択をとれた?
そんな自問自答をしようが、いくら後悔しようが現実は変わらない。
(会いたいよ。あなたに)
恋しくてたまらない。
今こそ死出の羽衣を使う時だと分かったのに、それは機能してくれない。
首に下げている雪菜からもらった氷泪石をギュッと掴む。
なんだか願いを叶えてくれるような気がしたから。
けれどやっぱり奇跡が起こるはずはなくて、諦めて手を下ろした時、他にも石をもらっていたことに未来は気づいた。
(コエンマ様からもらったブレスレット!)
未来が左手首にずっと付けている、ピンク色のパワーストーンのようなものが連なったブレスレット。
元の世界で人間として生きたいなら数年間は肌身離さず身に付けろと、コエンマから贈られたものだった。
妖力を封じ込め、妖化を止めてくれるからと。
(このブレスレットが私の闇撫としての力を封じてるなら…!)
衝動的に未来はブレスレットを外し、自ら死出の羽衣を被る。
頭の中は“彼に会いたい”
ひたすらそれだけだ。
他のことなんて考える余裕はなくて、ただ強いその想いに突き動かせられるままに、未来は真っ白な羽衣に包まれたのだった。