long dreamA


□意外な再会
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時間というのは不思議なものだ。
たとえ次元が違っても、等しい速さで時は流れる。


死々若丸があらぬ誤解を受け。
飛影がまた少し変わった頃。


未来もまた、彼らと同じくクリスマスイブを迎えていた。






「未来!帰ろー!」


うん!と友人に返事をし、荷物をまとめた未来は校舎を後にする。


今日終業式終えた未来は、明日から冬休みだった。


「うわ、雪降ってきたよ」


「ホワイトクリスマスになるかもね」


ぱらぱらと降ってきた粉雪が、クリスマスイブの訪れに色めきたつ街を彩る。


「未来のお母さんとお父さん、最近は車で学校の送り迎えしなくなったね」


「私が大丈夫って何度も言ったからさ。過保護だよね」


「無理もないよ。未来、半年も行方不明だったんだよ?」


娘が半年間も行方不明になるという経験をしたのだから、両親が心配し送迎をしたくなる気持ちはよく分かる。


「未来、もう一度聞くけどさ、本当に行方不明になっていた期間の記憶はないの?」


「うん。不思議なことにさっぱりと…」


嘘だった。


忘れるわけがない。
あんなに刺激的で大切な、愛おしい日々を。


しかし、異世界に行ってましたなんて話を信じてもらうのは困難を極めるであろうことは確実で、頭がおかしい人扱いされる懸念もあるので未来は記憶喪失を装っていた。


こうして大事な人たちに嘘をつく度、罪悪感が胸を刺し、苦しくもあったけれど。


最も心労をかけた家族にだけは真実を話したのだが、やはり最初は荒唐無稽な話だとして信じてくれなかった。
しかし未来の言っていることが本当でなければ説明がつかないことも多く、疑いつつも異世界の存在を認めるに至った。


「そっかあ。びっくりしたなあ、未来がいなくなった時と戻ってきた時は…」


トラックに引かれそうになった女の子がまばたきした瞬間いなくなっていたという、奇妙な目撃情報を最後に姿を消した未来。


半年後に突然帰宅すれば記憶がないらしく、入院し精密検査を受けるもすこぶる健康とのことですぐに退院となった。


今も警察は事件性がないか調べているが、捜査を続けても何の手掛かりもつかめていないのが現状だ。


「本当、未来が無事に帰って来てよかった!」


「うん…ありがとう」


こんな風に想ってくれる友人と、また会えてよかったなと心から未来は思う。


「留年せずにすんだのもよかったよね」


「ほんと!進級できて感謝だよ〜」


未来は夏休みを犠牲にした補習授業と学校からの大量の課題をこなすことで、ギリギリだった出席日数をカバーしたのだ。


未来を進級させるべく尽力してくれた高校の教師陣には、本当に頭が上がらない。


「しかも全然学校来れてなかったのに、成績上位でしょ?未来すごいよ〜!」


「言うて全然だよ。優秀な家庭教師のおかげかな?」


「へ〜、家庭教師つけてもらってたんだ」


蔵馬のことを思い浮かべながら述べた未来だが、友人は特に疑問を感じなかったようだ。


元の世界に帰って以降、勉強を頑張った未来の成績は上昇し、喜ぶ教師や両親からは褒められていた。


(別に勉強じゃなくて他のことでもいいんだけど…とにかく何かを頑張らなきゃいけない気がしたんだ)


未来にそう思わせたのは、他でもない幽助、桑原、蔵馬、飛影ら四人の存在だった。


バラバラの選択をして、それぞれの道で奮闘しているであろう四人。


ならば、自分も置かれた環境で精一杯やりたいと、四人に恥じない生き方をしたいと未来は思ったのだ。


そうしていたら、五つに別れた道がいつか回り回って繋がるんじゃないかって…


淡い希望も抱いていた。


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