long dreamA
□微笑みの爆弾
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楽しい時はあっという間に過ぎる。
今現在個室にいるのは、男性陣のみ。
そろそろ店を出る時間となり、洗面所へ行った未来を待っているのである。
「なんか実感わかねーけど…ほんとに行っちまうんだな、未来ちゃん」
椅子にもたれかかり、桑原が宙を見上げ呟く。
「あとついでに浦飯」
「ついでとはなんだついでとは」
「幽助」
桑原からぞんざいな扱いを受ける幽助に、呼びかけたのは飛影だ。
「オレも今日魔界へ行く。軀の元にな」
その台詞が幽助や桑原へ与えた衝撃とは裏腹に、飛影はさらりと告げた。
「蔵馬。貴様は行かないのか?」
「さすがにこんな急には行きませんよ」
「全然話が読めねー」
「おいおいどういうことだ!?」
寝耳に水の二人に、事の次第を蔵馬が説明する。
「見損なったぜ、オメーら。これ幸いと声かけてきた妖怪ンとこ行くのかよ」
驚きつつも受け入れた幽助と違い、怒ったのは桑原だった。
「結局一緒だ。テメーら戸愚呂や仙水と変わらねー!戦えれば立ってる位置はどっちでもいいってわけだ!いいやポリシーがない分あいつらよりタチが悪い!」
幽助に続き、魔界行きを決めた蔵馬と飛影。
それは、互いが敵になることを意味する。
三人はそれぞれ、敵対する魔界の三大妖怪の元へと行くのだから。
「いいか、未来ちゃんには絶対言うなよ!?最後に悲しませて心配させたまま帰らせたくねーだろ、オメーらも」
「どうしたの?」
怒りに身体を震わせ捲し立てていた桑原も、幽助や蔵馬、飛影も振り返る。
「私にできない話って…?」
「いや、未来、別に何も…」
「言って」
取り繕おうとした幽助だったが、珍しく強い口調の未来に誤魔化しはきかないと観念した。
「三大妖怪がいるって前に話したろ?雷禅、黄泉、軀の」
「うん。雷禅が幽助のお父さんで、今日会いに行くんだよね」
「ああ。そんで蔵馬が黄泉、飛影が軀んとこにスカウト受けて行くんだと」
驚きでしばしの間、目を見開きっぱなしの未来だったが。
「…………すごい」
てっきりショックを受けるかと思いきや、キラキラ瞳を輝かせている未来にギョッとする幽助ら一同。
「すごいじゃん蔵馬、飛影!魔界の三大妖怪ってものすごく強いんでしょ!?その二人から見初められたんだ!」
「見初められたって…嫌な言い方しますね、未来」
ぞわりとした寒気に襲われた蔵馬である。
「蔵馬と飛影の強さが認められたってことだよ!おめでとう!」
「飛影はそうだろうが、オレはちょっと違うかな。黄泉は昔率いていた盗賊団の部下で、借りがあるんだ」
「え、昔の仲間がすごい出世してたってこと!?それは仲良くしとくべきだよ、蔵馬!人脈とコネは大事だからね」
「未来ちゃん、いいのか!?こいつら敵同士になるんだぞ!?」
斜め上のズレた反応をみせた未来に、ズッコケる桑原。
「そうなの??」
「安心しろ。軀につく気はない」
未来が疑問符を浮かべれば、飛影が言い切った。
「軀のところに行けば戦闘には不自由しないからな。せいぜい利用してやるぜ」
「ほら、飛影もこう言ってるし!軀につく気ないって」
「いや、いくら飛影がそう思っててもよ、情勢的に戦わざるをえない場面になるかもしれねーぞ?」
どこまでも楽観的な未来に脱力し、怒る気も失った桑原が静かにツッコむ。
「まあきっと大丈夫だよ。なんとかなるさ」
桑原の最もな正論を聞いてもなお、全くブレない未来。
耐えきれず、幽助と蔵馬が吹き出した。