long dreamA


□微笑みの爆弾
2ページ/7ページ


「武術会からもう二か月か〜」


フライドポテトをつまみながら、呟いたのは未来だ。


「皆と会ってからは、もう五か月経つんだね」


「あの台詞忘れられねーよな、美少女くらまちゃん〜」


「あー!幽助!それ言わないで!」


「そういえば未来ちゃん、最初蔵馬のこと女だと思ってたよな」


「つくづくふざけた奴だぜ」


焦る未来の傍ら、桑原も飛影もニヤニヤ口元に笑みを浮かべている。


「く、蔵馬、怒った?」


「怒ってないってば」


少々機嫌を損ねた蔵馬だったが、恐る恐るこちらの反応を伺う未来の様子が面白く、クスッと優しく微笑む。


「よかった〜。あの時、蔵馬怖かったもん。鞭を鳴らしたのも私への敵意の表れかと思ったし」


「あん時の蔵馬のオーラ黒かったよな」


「そんなつもりはなかったけど」


「迷宮城かー…白虎の野郎はしぶとかったな」


「朱雀も手強かったぜ。蔵馬や飛影の戦った奴は何て名前だったっけ?」


「たしかオレは玄武、飛影は青龍でしたよ」


「一瞬のうちに16回切って、飛影が青龍を倒してたよね。かなり衝撃的だったから覚えてる!」


「そうだったか?」


「飛影、倒した本人なのに覚えてないの?」


全てはあの日から始まったのだ。
迷宮城での戦いを振り返る彼らの話題は尽きず、あたたかく和やかな空気が場を包む。


(初めて会った時は、皆とこんなに仲良くなれるなんて想像もしてなかった)


わけもわからぬうちに連れてこられた迷宮城。
垂金の別荘での雪菜救出戦。
暗黒武術会では優勝商品になってしまって。
仙水との戦いでは命まで落とした。


今となっては大切な宝物となった激動の日々を、未来は慈しむように思い返す。


「迷宮城ではさ、皆知り合ったばかりでバラバラだったけど…今はすっかり“チーム”って感じだよね」


「あ、飛影テメー、それオレの分!!」


言ってるそばから、喧嘩を始める桑原と飛影。
どうやら桑原が後で食べようと残していた唐揚げを飛影が食べたらしい。


「チーム…?」


ぎゃんぎゃん騒ぎ諍いを起こしている二人に疑惑の目を向ける幽助。


「ま、まあ桑ちゃんと飛影の喧嘩は浦飯チームの風物詩というか…」


「恒例行事ですね」


「こいつら迷宮城の時から変わってねーな」


「ん?何笑ってんだよ」


初対面時にいがみ合って以来、全く変わらないその関係性にクスクス三人が笑っていると、桑原が訝しむ。


「桑ちゃんと飛影の喧嘩は、見てて安心するってこと!」


「「安心??」」


本人たちの意に介さずハモった桑原と飛影に、他三人はさらなる笑いの渦へと飲み込まれた。


「すごい!ピッタリだったよ!」


「仲が良いんだか悪いんだか…」


「今表情から仕草まで丸かぶりだったぞオメーら!」


腹を抱えて爆笑する三人の脳内が理解できず、置いてきぼりの桑原と飛影は全く意味が分からないという表情で顔を見合わせた。


「テメーら、笑いすぎだぞ」


「何がそんなに可笑しいんだ」


二人とも、喧嘩の真っ最中であったことはすっかり忘れている。


(…楽しいなあ)


笑いながら、しみじみと思う未来。


楽しい。
全ての瞬間が。
この四人と一緒に過ごす今の時が、全部。


(大好き)


幽助も。
桑ちゃんも。
蔵馬も。
飛影も。


大好き!!!


照れくさくて言えなかったけれど、未来がずっと心から思っていたことだった。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ