long dreamA


□微笑みの爆弾
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連れてこられたのは個室の居酒屋。


未来の両隣に幽助と蔵馬、向かいに桑原と飛影が座っている。


「みんないつの間に計画してたの〜?師範とコエンマ様も知ってたみたいだし…ビックリしたよ!」


「さあな〜、桑原発案とだけ言っておくぜ」


突然のサプライズに驚く未来が聞けば、メニューを眺めつつ幽助が答える。


「桑ちゃんが?」


「ま、優勝の打ち上げを口実にした未来ちゃんの見送り会だな!」


「そっか…ありがとね、桑ちゃん!」


別れの前に五人で集まる機会をもらえたことが、未来はとても嬉しかった。


「おい桑原、オレの見送り会は兼ねてねーのかよ」


「はんっ!浦飯の見送り会なんか誰がするか!勝手に一人でやってろ」


「ああ!?テキーラストレートでしこたま飲ませんぞコラ」


「あ、お酒はダメだよ!てかどう見ても私たち未成年だし出してもらえないでしょ」


「オレが一睨みきかせれば問題ないぜ。それにこっちには老け顔の桑原がいるからな」


「誰が老け顔だ浦飯ィ!」


「ちょっと、ここお店!」


机を挟んで幽助の胸倉を掴んだ桑原に、未来は仲裁に入りつつも半笑いだ。


出会ったばかりの頃なら、喧嘩っ早い不良のやり取りに怯えハラハラしていたかもしれない。


けれど四人との絆がある今は、彼らの小さな諍いにも動じなくなっていた。


「まあまあ、二人共抑えて。桑原くんの内申にも響くし今日はソフトドリンクにしましょうか」


「そうだね!学校にバレたら困るのは桑ちゃんと蔵馬なんだから。幽助は無問題でもさ」


「…わーったよ」


蔵馬と未来の言葉で、幽助も渋々納得する。


「アルコールでこれ以上飛影の背が伸びなくなっても困るしな!」


「なんだと?」


間髪入れず、次は桑原と飛影の間で喧嘩が勃発しそうになる。


「はいはい、その辺にして早く注文しようか」


一触即発の二人の間に蔵馬が有無を言わさずメニュー表を差し出し、ひとまずその場は収束した。


(この四人、蔵馬がいなかったらどうなっちゃうんだろ…)


黒龍波やら霊丸やらが飛び交いあっという間に丸焦げになった店を想像して、苦笑いの未来である。


「未来は何がいい?」


蔵馬が隣の未来にメニュー表を広げて見せる。


「う〜ん、あ、私たこわさ食べたい!」


「……了解です」


「何今の間?」


意外にオッサンぽいチョイスだなと思うも口には出さなかった蔵馬。


「未来が乾杯の音頭とれよ」


「私!?なんで?大将の幽助がやりなよ」


「じゃ、大将命令でやれ未来」


注文をし終えるとまず先にドリンクが運ばれ、幽助が未来に命じる。


「…では、暗黒武術会の優勝と皆の健闘に〜」


慣れない音頭に若干照れつつも、未来がコップを掲げて。


「「「「乾杯!」」」」


二ヶ月ごしの打ち上げは幕を開けたのだった。


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