long dreamA
□伝えたいこと
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電車に揺られて約40分。
降り立った駅のホームにて。
「わあ、ちょっと潮の香りがするね!」
はしゃぐ未来が愛らしく、隣の蔵馬が柔らかく微笑む。
「蔵馬はここに来たことあるの?」
「小学校の遠足以来だな」
打ち上げから一夜明けた日曜日、約束通り蔵馬と未来は縦浜に遊びに来ていた。
「あ、観覧車だ」
「そういえば近くに小さな遊園地があったね。行きたい?」
「行きたい!」
「じゃあまずはそこへ行こうか」
群生したビルとは不釣り合いにそびえ立つ観覧車に惹かれ、二人は遊園地の方へと足を伸ばす。
「私ブランコが好きなんだけどあるかなあ」
「あの高いところまで上昇して回るやつ?」
「そうそう!あれすごい楽しい!」
「たしかあったと思うよ」
「ほんと!?やった!蔵馬も一緒に乗ろうね」
「もちろん」
クスッと笑いながら答えた蔵馬に、未来は小首を傾げる。
「私なにか変なこと言った?」
「いや、未来は好きなアトラクションも可愛いなと思ってさ」
「そ、そう?でもあれわりと怖いよ!高いし!」
子供っぽい趣味と思われただろうかと、慌てて未来が付け加える。
そうして都会の真ん中の小さな遊園地に到着した二人は、まず未来の希望通り空中回転ブランコに乗ることにした。
(ドキドキするなあ…!楽しみ!)
ブランコの一つに座り、シートベルトをつければアトラクション出発前の緊張とワクワク感が未来を襲う。
隣の蔵馬の方へ顔を向け、今度は未来がクスリと笑った。
「何かおかしかった?」
「だって、ブランコに座ってる蔵馬なんか可愛いんだもん」
それが蔵馬の地雷を踏む発言だと分かっていながら、クスクス未来は愉快気に笑う。
「それはどうも」
「褒め言葉だよ!蔵馬、ブランコ意外に似合うよ。いや意外でもないかな?」
案の定、蔵馬は苦い顔だ。
「ハイジみたいにオープニング歌いながら乗っちゃおっかな。ヨーレホーレヤッヒッホーって」
「そこから歌う気?」
ヨーデル部分から歌いだそうとした未来に蔵馬は吹き出す。
そんな他愛無いやり取りをしているうちにブザーが鳴って、ブランコは空高く上昇し回転を始める。
「キャーー!!」
風が涼しくて気持ちいい。
未来はブランコに揺られている間、終始笑顔だった。
アトラクションに乗っている間は、明日霊界から追い出される形で元の世界に帰らなければならないことも、何もかも忘れられた。