long dreamA


□別れの足音
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「ま、帰ったところで何かの拍子にまた私トリップしちゃうかもしれませんね!」


希望を秘めて冗談めかしく笑って言った未来だったが、晴れないコエンマの表情から自分の楽観的な考えは叶わないのだと察する。


「その可能性は低いだろうな。霊界は今以上に亜空間の結界を強める予定だ。二度と未来や異世界の者の侵入を許さないように」


つまり、幽助たちとも今生の別れとなる。


「そんな…」


「すまない」


愕然とする未来だが、頭を下げて謝罪するコエンマの姿にハッとし急いで首を横に振る。


「コエンマ様が謝る必要ないです!私にとっても良い話なんです。早く家族や友達に会いたいし、高校生活に戻りたかったんですから」


嘘ではなかった。
復学するには早ければ早いほどありがたく、帰れるなんてありがたい話なのだ。


「皆に会えなくなるのは悲しいです。でもこれが自然な形なんです。私が望んでいたことなんです」


元の世界に帰る。元の生活に戻る。
未来がずっと願っていたことのはずだった。


「だから元の世界に帰してくださる霊界の方々には本当に感謝しています。それに…私、これ以上親不孝したくないんです」


ふと、入魔洞窟での出来事を回想する。


あの時、未来は両親に申し訳ないと思いながらも死の決意をし、一度命を落とした。
親より先に死ぬなんて、最大の親不孝だ。


「早く元気な姿を見せて、家族を安心させてあげたいんです」


自分に言い聞かせているような未来に、コエンマは胸を痛める。


「よし。ならばこれを渡しておこう」


コエンマが差し出したのは、ピンク色のパワーストーンのようなものが連なったブレスレットだ。


「可愛い。何ですか、これ?」


「妖力を封じ込めるブレスレットだ。元の世界で人間として生きたいなら数年間はそれを肌身離さず身に付けるとよい。妖化を止めることができる」


「私の身体、完全に妖怪になったわけじゃなかったんですか?」


「いわば半妖みたいなものだ。未来の身体は今も刻々と妖化し続けておる。魔界で完全に妖化した幽助と違っての」


幽助は雷禅に身体を乗っ取られたことで、完全に妖化して心臓は止まり“核”が動き始めた。一瞬のうちに伸びた長髪と、刺青のような全身の模様がその証だ。


しかし、幽助のように爆発的な妖力の放出のきっかけがなかった未来は、身体が妖怪になろうとしている最中でまだ人間としての心臓が動いているのだという。


「元の世界に帰るなら、妖怪として生きるのは色々と不都合かと思ってな」


「そうですね…ありがとうございます」


寿命の差。
身体の構造の違い。


人間社会で妖怪の未来が生きるには問題が多く、ブレスレットの存在はありがたかった。


(今日、皆にお別れ告げなきゃだなあ)


さっそく左腕につけたブレスレットを見つめていると、仲間との別れを実感して未来の胸に寂しさがこみ上げる。


そして、皆と騒ぐ今日一日を精一杯楽しもうとの思いが強まるのだった。


(いっぱい、いっぱい笑うんだ)


明日の蔵馬とのデートも。


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