long dreamA


□別れの足音
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「未来?大丈夫か?」


反応を見せない未来を、心配するコエンマ。


未来が動揺するのも無理はないと、申し訳ない気持ちでコエンマはいた。
あまりにも唐突で急な話だったから。


「あっ…はい。ちょっとビックリしちゃって」


未来は心を落ち着かせる意味も込め、ストローを咥え残りのアイスティーを飲み干す。


「私の元いた世界が見つかったってことは武術会の後に聞いてましたけど、もう私を帰すためのエネルギーが貯まったんですね。こんなに早いとは予想外でした」


「いや、実は貯まっていないのだ」


「え?」


小首を傾げる未来の前に、コエンマはポケットからおしゃぶりを出して見せる。


「魔封環だ。天沼を生き返すために少し霊力を消費したが、まだ未来を帰せるだけの量は残っている」


「そんな大事なもの、私を帰すために使ってもいいんですか?」


コエンマが暗黒期のために何百年も貯蓄していた霊力。
それを使用してまで己を元の世界に帰すと申し出てくれた霊界を、未来は不審に思う。


「実は、霊界は幽助と未来を人間界から追い出したいと考えておるのだ」


非常に言いにくそうに述べたコエンマだったが、その内容に未来はあまり驚かなかった。


「魔族大隔世で復活して、特防隊の人に殺されそうになったくらいですからね。まだ霊界の人には快く思われていなかったんだ…」


魔族大隔世で覚醒した妖怪は邪悪だという定説を、霊界上層部の者たちは信じて疑っていないのだ。


「霊界上層部は幽助を魔界へ追い出すのを機に、ワシの魔封環を使ってまで未来を元の世界に戻す選択を迫ってきた。ワシも忍の件では好き勝手動いてしまったからの…拒否は難しかった」


表面上はお咎めなしとなったが、上層部の命に背いて魔界の穴事件の際に行動したコエンマの、霊界での立場は日に日に悪いものとなっていた。


「霊界の殺手から逃げるためにも、未来はここを去るべきだとワシも思う。霊界は幽助と未来の抹殺命令を取り下げていないからな。幽助からの報復を恐れて今は特防隊も大人しくしておるが…」


しかし、幽助が魔界に行った後なら話は違う。
霊界が未来を抹殺しようとするだろうと、コエンマは危惧している。


「抹殺…」


想像以上に霊界の自分を見る目は冷ややかだったのだと知り、呆然と未来はその恐ろしい単語を復唱する。


魔族大隔世で復活した後も、以前と変わらない平和な日々が戻ってきたと思っていたが、それは勘違いも甚だしい錯覚だった。


未来は幽助の存在に守られていたのだ。
彼が魔界へ行けば、その庇護もなくなってしまう。


「これは霊界からの“命令”ってことですよね。早くこの世界から消えろって」


元の世界に帰ることは強制で拒否する余地はなく、己に決定権はないのだと未来は悟る。


もし断れば、その先に待っているのは死だ。
霊界特防隊が未来を殺しに来るだろう。


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