long dreamA


□別れの足音
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翌朝、未来が起きた時にはもう既に飛影は外出していた。近くの森にでも行っているのだろう。


土曜日の今日は、幻海邸で魔界の穴事件のお疲れ様会が夜から開かれる予定だ。


昨日の蔵馬のこと。飛影のこと。
なるべく考えないように、未来は朝から家事とお疲れ様会の準備に勤しんでいた。


お疲れ様会と称した打ち上げは持ち寄りパーティーで、各自が料理を用意し持ってくることになっている。


未来と雪菜は飲み物や紙皿の買い出しに行ったり、ピザや寿司の出前を頼んだりと夕方まで忙しく過ごした。


ようやく一息ついた時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。


「もう誰か来たんでしょうか」


「それにしては早いね。私出てくる!」


リビングに雪菜を残し、未来が玄関の戸を開けると。


「コエンマ様!」


「しばらくぶりだな、未来」


立っていたのはスラリと背の高く、端正な顔立ちの青年・コエンマだった。


今日はおしゃぶりをしておらず、額のJrの文字も隠しているので、黙っていればただのイケメンである。


「どうしたんですか?まだ打ち上げの時間には早いですよ」


「打ち上げの前に未来と二人で話したくてな。ま、つまるところデートの誘いだ」


ハッハッハと笑うコエンマは冗談で言っているようにしか見えず、彼の真意が未来は読めない。


「おや、実は四角関係だったのかい」


「おお、幻海。少し未来を借りてもいいか?」


「あたしは全く構わないよ」


幻海の謎な発言に疑問符を浮かべる未来を置いて、二人は話を進めていってしまう。


「さ、幻海の了承も得たし行こう未来」


「え、ええ〜!?」


強引にコエンマから背中を押され、一緒にデート?に繰り出す未来なのだった。




そうして連れて来られた落ち着いた内装の、シックでおしゃれな店内にて。


(コエンマ様の話って何だろう)


向かいのコエンマを訝し気に見つめつつ、アイスティーに口をつける未来。


コエンマと未来は、近くの喫茶店に入っていた。


「幽助が魔界へ行くという話は聞いたか?」


「はい。知っているのは私と螢子ちゃんくらいだと思います。コエンマ様もご存知だったんですね」


皆には打ち上げの時に本人の口から話すとのことだったため、幽助が魔界へ旅立つことを誰にも未来は言っていなかった。


「ああ。幽助が魔界へ行く穴は霊界特防隊が開ける予定だからな。明後日、月曜日の夜11時半に決行される」


「そうなんですか…寂しくなりますね」


幽助は三年間、魔界へ行ってしまうのだ。遺伝上の父親である、雷禅の国へと。


「そこで、急な話で申し訳ないのだが…幽助と同じ日に、未来を元の世界に帰すことが霊界で決定した」


いつか来るとは覚悟していたその日を、あまりにも唐突に告げられた未来。


頭が真っ白になった。


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