long dreamA


□ドキドキ
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「幽助と螢子ちゃんを見て思ったの。飛影にも帰る場所があったらなって」


妖怪の感覚からしたら家がないのは大した問題ではないのかもしれない。
けれど、未来はあの日、訪れた飛影を彼に帰る場所がないと知りつつ見送ることができなかった。


その思いは、昨日の幽助と螢子とのやり取りから、より一層強くなった。


「いつか飛影が自分で帰る場所を見つけるまでは、幻海師範の家がその役割を担えばいいから」


未来にとっての帰る場所は、元の世界で家族と暮らす家と、幻海邸。
幽助にとっての帰る場所は、母親と暮らすマンションと、螢子だ。


家なき子の飛影に、未来は家のあたたかさ、帰る場所があるという安心感を知ってほしくなった。


飛影が大事な仲間だから。


「幻海師範もね、私と飛影に、家事をするならこの家に好きなだけいていいし好きな時に出て行って構わないって言ってくれてるの」


口ぶりこそ厳しいが、幻海の優しさを未来はこの世界に来た時からずっと感じてきた。


「だから、おかしいと思われても、私は飛影を追い出せないな…。飛影が出て行きたいって言ったら止めないけどさ」


それに、海藤がいるので口には出さなかったが、兄妹である飛影と雪菜が共に過ごす時間を未来は奪いたくなかった。


「いつも雪菜ちゃんと三人で家事分担してやって、夜は幻海師範も一緒にテレビ観たり、ゲームしたり、ほのぼのした日々だよ。この前ゲームバトラーもやった!」


「ゲームバトラーか。懐かしいな。まだ洞窟でやってから一週間ちょっとしか経ってないのに」


未来が持ち出した話題に一抹の懐かしさを感じつつ、海藤はチラッと向かいの蔵馬を見る。


(南野からしたら、好きな女と友人の男が一つ屋根の下なんて面白くないだろうな)


二人きりで話したいことがあるかもしれないし、気を利かしてトイレと断り席を外してやろうと海藤は思い立つ。


しかし、海藤よりも早く、先に立ち上がったのは蔵馬だった。


「未来。ちょっとこっち来て」


「え?」


蔵馬に手を引かれ、困惑しつつ未来は彼に従い店の外に出る。


(驚いた…まさか飛影が未来と同居していたとは)


肝を冷やされた蔵馬だが、どうやら飛影は行動を起こしてはおらず未来との関係に変化はないようなのでひとまず安堵した。


だが、安心している暇はない。
迫る焦燥感が、蔵馬を急がせる。


ちょうど蔵馬も未来への感情を持て余していた頃だった。
そろそろ彼女へ気持ちを伝えたい。


そして、未来を自分のものにしたい。


「蔵馬、どうしたの?」


「突然ごめん。少し二人で話したくて」


雪村食堂の傍らの道路脇で、蔵馬と未来は向かい合う。


「未来。明後日は勉強会の予定だったけど、変更できない?」


「構わないよ!いつにする?」


「変更するのは、日時じゃなくてさ。その日は勉強はせずに、どこか遠出しないか」


「え。それって」


「デートしよう」


今度は未来が驚かされる番だった。


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