long dreamA


□ドキドキ
1ページ/6ページ


キーンコーンカーンコーン…


四時限目終了のチャイムと同時に、わっと歓喜にわく教室。


「やっと終わったー!」
「この後どっか飯食い行こーぜ」
「オレ部活あるから無理だわ」


テストの出来なんて関係なく、中間試験から解放された喜びに生徒たちは浸る。


それは盟王高校一の秀才、南野秀一とて例外ではなかった。


(…長かった)


席に座ったまま、思わずうーんと伸びをする。


魔界の穴事件が解決するやいなやすぐ試験週間が訪れ、もう一週間以上幽助たちと会っていない。


つまり、未来とも。


勉強会は中間試験前でも実施できると言ったのだが、彼女が遠慮するので折れてしまった。


「南野くん、問三の答え何にした?」


成績トップの蔵馬の机に、近づいてきたのは女子生徒数人。


「オレはAにしたよ」


「やった!私も南野くんと一緒!」
「ガーン私Aと迷ってCにしちゃった!」
「ショック〜」


しかし、蔵馬と答えが食い違った女子生徒も、あまり落ち込んでいる風には見えない。


彼女らにとっては、試験の答え合わせよりも、理由をつけて蔵馬と会話することの方が目的であり重要なのだ。


「南野くん、やっぱりすごいねえ」
「頼りになるね。助かっちゃった」
「ありがとう!」


蔵馬が質問にいくつか答えると、満足した女子生徒たちは笑顔で去っていく。


「相変わらずモテモテだな南野」


話しかけてきたのは、蔵馬と並び盟王高校きっての秀才と有名な同級生の海藤優だ。


といっても、海藤は魔界の穴事件以来、蔵馬にとってただのクラスメイトではなくなった。


蔵馬の正体が妖怪であると知っており、なおかつ南野秀一として生きる面を見てきている、唯一の相手である。


「そのうち週末に勉強教えてくれなんて頼まれるぜ」


「さすがに休日までは協力しないさ」


「永瀬さんには教えるのに?」


帰り支度をしていた蔵馬の手が止まる。


その反応に意表を突かれたのは海藤の方だった。


「…驚いたな。図星だったのか?冗談で適当に言ってみただけなんだけど」


「未来には、時々勉強を教えてるんだ。もっぱら土日が多いかな」


海藤に一本取られてしまった蔵馬だが、開き直って白状する。


「へー。知らなかった。じゃあ今週や先週も?」


「いや、先週はオレが中間試験前だから未来が遠慮してやらなかった。今週は日曜の予定だ」


「そうなのか。永瀬さん、今学校に通えてないもんな。普段は何してるんだ?彼女」


「飲食店でバイトしてるらしい」


「大変だなあ、永瀬さんも」


ある日突然異世界に来てしまい、普通の高校生活をおくれなくなった未来に海藤は同情する。


「南野、今からそこ行こうぜ」


思わぬ海藤の提案に、蔵馬は戸惑う。


「今から?」


「特にこの後用事ないだろ?昼飯はそこで食おう。永瀬さんの働く店に貢献しようぜ」


それに、と海藤は続ける。


「南野、明日の打ち上げまで会うのが待ちきれないって顔してる」


「なっ…」


「冗談だ。それともまた図星だったのか?」


黙ってしまう蔵馬。会話は完全に海藤のペースである。


(…迂闊だった)


海藤の前で未来を想うような素振りをしたと、思い当たる節が全くないわけではない。
まあ、別に悪い気はしないのだが。


海藤に未来への想いを知られ、吉と出ることもないが凶と出ることもないだろう。


頭が良い奴は察しも良いと、痛感する蔵馬なのであった。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ