long dreamA
□幽助と私
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幻海邸のキッチンで、三人の若者が並んで皿洗いをしていた。
(三人だと仕事がはかどるなあ)
今まで家事を一人でやっていた未来は、労働人口が増え、かつ家が賑やかになったと喜ぶ。
「お願いします、飛影さん」
雪菜から手渡された皿を飛影は無言で受け取る。
洗剤をつけたスポンジで未来と雪菜が皿を洗い、飛影が流水ですすぐ。
効率よく三人で作業を分担すれば、皿洗いも早く終わる。
(雪菜ちゃんと飛影が来てからもう一週間か)
一週間前、魔界の穴事件の噂を耳にして桑原らの安否を心配した雪菜が幻海邸を訪問したのを機に、彼女はここに居候することになった。
人間界で家がないならと未来が勧め、幻海も了承したのだ。
雪菜は遠慮していたが最終的には折れて、では二週間ほどお世話になりますと申し出、同居する運びとなった。
というのも、まもなく雪菜は兄を探す場所を人間界から霊界に移すことを考えているという。
霊界は人間界、魔界の情報を広く把握しているからと。
(霊界の人…コエンマ様やぼたんは飛影が雪菜ちゃんのお兄さんだって知ってるんだよね)
探し場所に霊界を照準に当てた、雪菜の鋭い慧眼には恐れ入る。
家族は一緒に住むべきだ。
飛影と雪菜が共に時間を過ごす機会を、お節介かもしれないが未来は作りたかった。
その日の午後。
薄く空が赤みがかり、日が沈む頃合いの夕暮れ。
「晩御飯は三人で食べといてね。私はまかないがあるから」
「未来さん、いってらっしゃい。お気をつけて」
幻海は霊的相談の客の相手をしているし、飛影は鍛錬をしに外出中のため、見送りは雪菜だけだ。
「いってきます」
可愛い雪菜の笑顔に見送られるのは癒されるなあ、とルンルン気分で未来は雪村食堂へと出発した。
(バイトに向けて気合が入る…!)
桑原の気持ちも分かるというものだ。
今日の未来のバイトのシフトは夜からだった。
雪村食堂でのバイトは、この世界に来た時から週数回のペースでずっと続けている。
バイトの前に本屋に寄ろうと、未来は早めに家を出発していた。
(今日はメガリカライブのインタビュー記事が載った音楽誌の発売日だもんねー!)
ライブの帰り道に散々な目にあったというのに、全く懲りてない未来。
彼女のメガリカ魂はいまだ熱く、本屋までの道を急ぐのだった。