long dreamA
□home sweet home
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閉め切ったカーテンから漏れる西日が瞼を刺激し、泥のような眠りから未来は覚める。
布団に入った際も既に太陽は昇っていたが、その時は眩しさなんて気にならないほど疲労していた。
起き上がるのが億劫で、布団の中で身じろぎしつつ枕元の時計に目をやる。
(…もう三時か)
さすがにもう起きないとまずいだろう。
そう思うのに、なかなか身体は動かない。
(さすがにこの時間から二度寝するのは怠慢だよね…起きよう)
心地よい寝床からやっとのことで出る決心をした未来なのだった。
・・・・
身支度を整えた未来は、幻海の待つ畳が敷かれた茶の間の戸を開ける。
「師範、おはようございます」
「ようやく起きたのかい」
とっくに起床し、茶を飲みながらテレビを観ていた幻海である。
「師範は早起きですね」
「年寄りは短時間睡眠で済むんだよ」
未来は幻海に注いでもらった茶に口をつけ、共にテレビを眺める。
平日の夕方なんて面白い番組は放送していないが、未来は幻海と共に過ごすこの何気ない時間がとても好きだった。
また以前と変わらない平和な日常が戻ってきたのだと実感する。
(日常、か)
思えばこの世界にトリップした時は全てが非日常だったが、もうすっかりこの生活にも慣れた。
掃除・洗濯・炊事をこなし。
雪村食堂へバイトに行き。
幻海と寝食を共にして。
高校に通えていないため、自主的に勉強をする。
またいつもの穏やかな日々を過ごすことの出来る幸せを、胸いっぱい噛みしめる。
「結局打ち上げとやらはいつになったんだっけね」
「来週の土曜です。蔵馬と海藤くんの中間試験が終わった後がいいだろうってことになって」
未来提案のお疲れ様会は、今週の土曜がまず候補日にあがったが、盟王高校が来週から中間試験だと蔵馬・海藤の会話から判明したため、次週に持ち越されたのだ。
「じゃあ蔵馬との勉強会も今週はやらないのかい」
「はい、次は来週の日曜になりました」
蔵馬は試験前も勉強会はできるし打ち上げも今週土曜で構わないと言ったのだが、未来は遠慮し断った。
「ふうん。じゃあ来週までは確実に動きナシかい」
つまらなそうに小さく呟いた幻海。
「師範、何か言いました?」
「別に」
よく聞こえなかった未来が問いかけるも、ズズッと幻海は茶をすするだけなのであった。