long dreamA
□日の出
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未来は聖光気が出せないこと、次元の切れ目から樹が現れたことに動揺する。
「樹…!?」
「お前の中にあった忍の魂の一部は消えたんだ。当然だろう」
未来が一度死んだ際、未来の魂に寄生していた仙水の魂の一部は完全に消滅し、未来が生き返っても復活することはなかった。
したがって、未来の持つ聖光気の能力は失われたのである。
「そのまま死なせてやれ」
「ふざけんなてめェすっこんでやがれ!なんとしてもリターンマッチだ、このままじゃ納得いかねェ!」
「どうせあと半月たらずの命なんだ」
衝撃的な樹の台詞に、幽助たちは息を止める。
「忍の体内は悪性の病巣でボロボロなんだ。ドクター神谷のお墨付きだよ。普通の人間ならとっくに墓の中だそうだ」
「本当か」
幽助が静かに問いかけると、仙水が薄く目を開ける。
「負けた言い訳にはしないよ。最後の力、あれは数段君が上だった」
「違う!あれはオレの力じゃねェ!オレはあのとき意識がなかったんだ」
「使いこなせなかった力を無意識の中でマスターして戦ったってことだろう。明らかに君が放った力だ」
仙水の表情はとても穏やかで、潔く負けを認め、そして近づく死を悟り受け入れていた。
「半月ありゃ十分だ。痛み止め打ってでもオレと戦え!」
「鬼だこいつ」
幽助の鬼畜な発言に、桑原はドン引きである。
「コエンマ、これを」
仙水がポケットから取り出し渡したのは、コエンマのおしゃぶりだ。
「あんたの魔封環が最後の難関だったからな。未来をダシにしたことで使われずにすんでホッとしたよ」
「…ワシに洞窟の途中で遊魂回帰の術を使わせ魔封環のエネルギーを消費させたのも、お前の計算のうちか」
「魔封環を使われた時のことを想定して、できればその前に霊力を無駄遣いさせておきたかったからね」
「遊魂回帰の術?」
コエンマと仙水の会話が理解できず、未来は首を傾げる。
「死者蘇生の術だ。幻海の時もこの術を使い蘇生した」
「もしかして…天沼くんを甦らせてくださったんですか!?」
ピンときた未来がコエンマに詰め寄ると、ああ、と肯定の言葉が返ってくる。
「よかった…!コエンマ様ありがとうございます!本当に…!」
歓喜に打ち震える未来。蔵馬もまた、驚きと大きな安堵が胸に広がっていた。
そして今までの仙水と樹の言動から、未来はふとある考えに思い至る。
「もしかして仙水も樹も、私が闇撫の末裔で生き返るって読んでた…?」
「御名答」
樹がパチパチと二、三回拍手を送る。
「なぜ異世界から来る人間が女性と分かったか、話すのは今のようだな」
ついに、全てが明かされる。