long dreamA
□Story
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ゴロゴロと響く雷鳴に、よどんだ空気。
薄暗い魔界の地に、ついに仙水は降り立っていた。
彼の目の前には、全身傷だらけで倒れた桑原、蔵馬、飛影の姿がある。
激しい戦闘があったことが窺えるが、ボロボロの三人とは対照的に仙水だけは涼しい顔をしていた。
「苦しめてすまなかったな。今楽にしてやるよ」
己が強すぎる故に残酷なまでに敵との実力差があると、快感をおぼえる反面ひどく虚しい気分になると仙水は思う。
三人にトドメをさそうとした仙水は、近づいてくる大きな妖気と小さな妖気の存在に気づいた。
「桑ちゃん!蔵馬!飛影ー!」
ぶんぶんと手を振って、プーの背中に乗り飛んでくる未来と隣にいる幽助の姿を認め、三人は目を見開く。
「ワリィワリィ遅れっちまってよ!いや〜間に合ってよかったぜ」
「なんとさ、私と幽助の祖先が妖怪だったみたいで復活できちゃったの!魔族大隔世ってヤツらしい!私は闇撫の末裔だって!」
こちらへ到着し、プーから降りた幽助と未来。コエンマも無言で降り立つ。
「実感ねーけどな。見たところあんま変わってねーし」
「でも私たちのコレ妖気だもんね。自分が妖怪になっちゃったなんてビックリ!」
ポカンと呆気にとられた三人は、はつらつとしてすこぶる元気そうな二人の顔をまじまじと、穴が開くほど見つめる。
「くっ…くくく」
堪えきれなくなったのか、最初に吹き出したのは蔵馬だった。
「あはっあははは」
「へへへ」
蔵馬につられて桑原も幽助も、未来もさかんに笑いだす。あの飛影でさえも。
「まさか魔族だったとはな。つくづくわけのわからん奴らだ」
立ち上がった飛影は、ニヤリと笑って幽助の顔を一瞥すると、未来の前に来る。
「飛影、傷だらけじゃん!蔵馬も桑ちゃんも…!大丈夫!?」
「問題ない。お前と幽助が戻ってきたら疲れも痛みも感じなくなった」
飛影の発言に、えっと未来は言葉に詰まって。そして。
気づけば飛影に抱きしめられていて、本当に何も言えなくなった。
「ひ、ひえ」
やっとこさ彼の名を口にしようとすれば、背中にまわった腕の力をさらに強められる。
「ヒューヒュー」
「やるじゃねーか、見直したぜ飛影!」
幽助と桑原の囃し立てる声も、今の飛影には聞こえていないらしい。
(飛影…!?)
止まったはずの心臓がドキドキうるさい。
生き返ってまた動き出したのかな?
(…あれ…なんかもう…苦しくて…何も考えられない…)
突然の飛影の行動に、混乱する未来の思考に次第に白いモヤがかかっていく。
「やめろ飛影」
あまりにも強く抱きしめられ酸欠状態となっていた未来から、べりっと飛影を蔵馬が引き離した。
「おい飛影!未来ちゃん絞め殺そうとしてどーすんだ!」
桑原が飛影の首根っこを掴むが。
「こいつ寝てやがる…」
黒龍波を二回も出した飛影は、未来が戻ってきて安堵した心も手伝い、睡魔には抗えなかったらしく既に夢の中にいた。