long dreamA
□星をめざして
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「大竹、気は確かか!」
「混乱されるのも無理はありません。我々もエンマ大王から調査の命を受けるまで考えもしませんでした」
詰め寄るコエンマに大竹は至極淡々と応じ、そして衝撃的な台詞を吐いた。
「浦飯幽助と永瀬未来は魔族の子孫です」
幽助と未来が、魔族であると。
「バ…バカな!二人の両親は人間だぞ!」
「そうです。祖父も祖母も人間です。その前もその前も人間ですが…」
「…まさか…魔族大隔世…!?」
思い当たる節があったらしいコエンマに、たくわえた口髭を揺らし大竹が頷く。
「魔族大隔世…?」
「A級以上の妖怪ができる人間との遺伝交配だ。隔世遺伝を何代も後に、極端な形で魔族は意図的に起こすことが出来る」
聞き慣れぬ単語に御手洗が首を傾げ、コエンマが簡単に説明する。
「その通りです。何世代も前に魔族が人間に飢えつけた忌むべき力!それが二人に宿っている」
大竹はまるで魔族や幽助や未来が親の仇かのように、心底忌々しいといった表情で語る。
「浦飯幽助の祖先はおそらく強大な妖力を持つ闘神です。彼が一度死んだ時にはまだ遺伝覚醒に耐えられるだけの器がなかったのでしょう。それが発見の遅れに拍車をかけたのです」
皮肉にも霊界は幽助を霊界探偵として甦らせたことで魔族隔世の手助けをしてしまったというわけである。
「対して永瀬未来の祖先は闇撫だ。強い妖力は持たないが、次元を自在に操ることが出来る。彼女がこの世界にトリップできたわけです」
未来に眠る闇撫の力が、命の危機に瀕した際に発動しこの世界にトリップしたのだろう。
結界に阻まれることなく未来が次元間を移動できたのは、闇撫の子孫だったからである。
「やはり早く元の世界に帰すべきでした。人間の老婆を生き返らすために我々の霊力を費やすなどせず」
おしゃぶりに貯めていた霊気を幻海のために使用して、未来のこの世界への滞在期間を延ばしてしまったことを、大竹はひどく悔しがる。
「彼女に宿っていた仙水の魂の一部は一度死んだことで消滅したでしょう。完全に闇撫として覚醒する前に、始末しなくてはなりません」
仙水の魂は消えた。
つまり、まっさらな未来の魂に戻ったのである。
「永瀬未来も浦飯幽助も、極めて危険な、抹消すべき存在です。魔界への穴を開けようとするのが仙水ではなく彼らでもおかしくなかった」
「一体何を…何を言っているんだあんた達は」
御手洗が湧きあがる怒りと動揺に、ワナワナと身体を震わせる。
「今までの未来の姿を見てきたらそんなことは言えないはずだ!浦飯さんが誰のために戦ってきたと思ってるんだ!二人に魔族の血が入ってたからといってそれが何だというんだ!」
「魔族大隔世により目覚めた者は強大な力を持ち、残忍で凶悪な性格だというのが定説だ。二人を抹殺するのは社会のためなのだ」
自分は正しいと確信する大竹は、正義感と使命感に燃えていた。