long dreamA
□星をめざして
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「…うっ…」
大地が揺れ、崩れていく洞窟の壁と天井。
繰り返す地響きに、仙水に殴られ気を失っていたコエンマが目を覚ます。
「だ、大丈夫ですか!」
頭を押さえふらつくコエンマの身体を、御手洗が受け止める。
御手洗に支えられたコエンマの視界にまず映ったのは、薄く血を吐き倒れている幽助と未来の姿だった。
「幽助…未来…すまん。ワシの責任だ…」
今回の件は自分が仙水を霊界探偵に命じたことが招いた悲劇だと、責任を感じるコエンマは血がにじむほど強く唇を噛んだ。
「事態はどうやら最悪な展開を迎えてしまったようだな…」
ついに完全に開き切った魔界の穴を見つめ、コエンマが呟く。
「ワシが寝ている間に何があった」
「二人が仙水さんに殺されて…ボクらは桑原の次元刀で裏男から脱出したけれど、間に合わなかった」
御手洗が悔しそうに俯いて答える。
「一体どうなるんです?とうとう穴は開いてしまった。さっきまで群がっていた妖怪は黒龍波とかいう技で消し去ったけれど…」
「本当に恐ろしいのはそんな連中じゃない。強力な妖怪ほど利口で慎重だ。この穴は安心して通れるとそいつらが判断した時、人間界は終わる」
そんな、とうろたえた御手洗だったが、ふと以前聞いた樹の言葉を思い出す。
「でもまだ結界がある!人間界と魔界の間に結界をはってあるんでしょう。強力な妖怪ほどその結界を通れないと樹さんが言っていた」
「桑原が切るさ。仙水と戦うために」
「勝ち目はないのに?」
「そういう奴だ」
桑原なら絶対に次元刀で結界を切ると、彼の人柄を知るコエンマは断言できた。
「ワシにはもう止められん。その力も資格もない」
己の無力さを自嘲したコエンマは、若くして命を散らした二人を弔おうと、彼らの遺体に近づく。
「…おかしい」
そこでコエンマが、ある不可解な点に気づき眉間に皺を寄せる。
「幽助と未来の霊体があがってこない。心臓が動いてないことは確かなのに」
「コエンマ様。お怪我はありませんか?」
まるで眠っているかのように穏やかな二人の死に顔を眺めていたコエンマは、武骨な男の声に顔を上げた。
「霊界特防隊!」
見上げれば十数人の霊界エリート戦士が立ち並んでいた。先ほどコエンマの名を呼んだのは、隊長である大竹だ。
「予定通り三グループに分かれ任務につけ!Aチームは至急穴を塞げ一週間ですませろ!Bチームは亜空間で待機!妖怪がきたら始末しろ」
大竹の指示で、隊員たちはそれぞれ行動を開始する。
「Cチームは浦飯幽助と永瀬未来を抹消しろ!」
「な!?」
コエンマは気が狂ったとしか思えない大竹の命令に耳を疑った。
霊界の上層部が未来を周りに混乱をきたす危険因子とみなし、早く元の世界に帰したがっていたことは知っていた。
どんどん力をつけていく幽助を、蔵馬や飛影もろとも魔界に追いやりたいと思っていたことも。
しかし、だからといってどうして抹消だなんて命が下ることになるのか。