long dreamA
□守りたい
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何度仙水に殴られても、そのたびに拳を振り上げ攻撃を続ける幽助。
「未来ちゃん!今のうちに逃げろ!」
「未来!早く逃げるんだ!」
桑原や蔵馬が懸命に裏男体内から大声で呼びかけるが、未来は棒立ちになったまま動かない。
「ダメだ。呆けていやがる」
心ここにあらずな状態の未来に、飛影がチッと舌打ちする。
抱える焦燥感や苛立ち、悔しさをぶつける先がなく、血がにじむほど彼は拳を強く握った。
「もう休みたまえ」
些か闘いに飽きてきた仙水が、幽助の腕を掴み動きを封じた。
「ぎゃああああー!!!」
仙水に腕を折られ、激痛に呻く断末魔のような幽助の叫びが洞窟に響く。
(もうあんな思いは御免だ…!)
暗黒武術会決勝戦での記憶がフラッシュバックする。
あの時、幽助は桑原を殺しに向かう戸愚呂を止めることが出来なかった。
仲間を目の前で殺されるのは、身を引き裂かれるような耐え難い苦痛と悔しさの波に襲われて。ふがいない自分が許せなかった。
結局桑原は生きていたが、戸愚呂と違い仙水は本気だ。
確実に未来を殺そうとしているのは、その狂気的なほど奇妙な落ち着きをはらう不気味な瞳を見れば明らかである。
「未来!オレに聖光気を当てろ!まだ…まだオレはやれる!」
スタミナ切れでフラフラになった幽助が命じる。
「未来!早くしろ!」
何度目かの幽助の呼びかけで、心ここにあらずだった未来の表情が崩れた。
「できない…もうできないよ…」
やっと声を出せた未来が、悲痛に顔を歪ませ、ふるふると首を横に振る。
聖光気で幽助を復活させても、また彼がボロボロになるまで仙水と闘うだけ。その繰り返しだ。
これ以上未来は幽助が傷つけられるところを見ていられなかった。
「幽助ありがとう…幽助は十分頑張ってくれたから…」
「クソっ…うおおおお!」
それでも諦めきれない幽助が、底をついた力を振り絞り仙水に殴り掛かる。彼はもう気力だけで闘っていた。
苦しむ未来と幽助の姿に、仲間たちの胸も痛む。
「おい貴様。今すぐオレたちをここから出せ」
早鐘を打つ己の鼓動に気づきながらも、努めて冷静に飛影が樹に命令した。
「樹。オレからも頼む」
飛影と同じくひどく汗をかいた蔵馬が静かに妖力を放出し始める。
「お願いだ」
今度こそ、自分の手で未来を守りたいから。
何度も自分の心を救い癒してくれた彼女を、今度は自分が救いたいから。
「ボクを倒した次元を切り裂く刀、今出せないのか!?」
「そ、そうだ!あれがまた出せりゃ…」
次元刀で裏男体内から脱出できるかもしれないと、御手洗の助言で閃いた桑原が両腕に力を込める。
「クソ!なんで…なんで肝心な時に出来ないんだよ!」
しかし能力に目覚めたばかりの桑原は、コントロールが上手くできず普通の霊剣しか出せなかった。