long dreamA
□種明かし
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「てめェがオレに勝てない理由その5。その女を殺さない限り、オレが死ぬことはないからだ」
耳を疑うその台詞に、しばし時が止まったかのような感覚に陥る。
「オレを倒すにはその女を殺す必要がある。だがてめェにそれが出来るか?」
「何意味の分からねーこと言ってやがんだ仙水のヤロー。そんな空事でオレたちを動揺させる作戦かァ!?」
「つくならもっとマシな嘘をつけと言いたくなるぜ」
珍しく意見の一致した桑原と飛影。
馬鹿げた戯言だと切り捨て、信じる気にもなれなかった。
(確かに信じ難い、全く道理にかなわない話だ。だが…!)
だが、どうして仙水がそんな嘘をつく必要がある。
意味なく根も葉もない嘘を仙水がつくとは考えられず、蔵馬はじとりとした嫌な汗をかく。
「何ふざけたこと言ってんだテメーは…ぐっ」
「あっ…幽助、待って」
起き上がろうとしたものの十分にまだ回復しておらず、痛みに顔をしかめた幽助を介抱する未来。
仙水の発言に胸中穏やかでない未来だったが、その動揺を払拭するように幽助へ聖光気をおくることに専念する。
「忍、何を言っておる。未来を殺さぬ限りお主が死なないなど…そんな滅茶苦茶な話があるわけなかろう。とにかく、もうこんなことはやめろ。これ以上罪を重ねるな」
「オレは忍じゃねえ、カズヤだ。てめェの指図なんざ受けねえよ」
真摯に語りかけるコエンマだが、仙水は耳を貸そうとしない。
「と言っても誤解するなよ。今回の計画はオレたち全員で決めたことだ」
「オレたち…仙水さんの別人格のことだな」
仙水の言う“オレたち”が自分や天沼、刃霧、神谷たちではないと御手洗は悟る。
「そうだ。仙水の中には忍も含めて七人の人格がいると言ったな」
樹によると、主人格が忍で他に戦いを担当する人格が三人、家事など別のことを担当する人格が三人いるという。
「女性の人格も一人いて“ナル”という名の泣き虫役だ。彼女は内気で純情で傷つきやすくオレはよく悩みを打ち明けられて彼女を慰めた」
オレは忍の次に彼女が好きだった、とこぼす樹。つくづく仙水への偏った愛を抱いている男である。
「異世界から人間…しかも女性が来ると知った時のナルの取り乱し様は今まで類を見ないほど激しかったな。なだめるのにどれだけ手こずったか」
「異世界から来る人間って…私のことだよね。私が来ること事前に分かってたの?」
驚く未来が外界から問いかける。
「オレは闇撫、次元を操る妖怪だ。次元の微かな歪みを君が来る数日前から感じていた。異世界から人間が訪れるであろうと察するのは容易だった」
「私が女性ってことまで何で分かったの」
「いい質問だ。だが今は答える時ではない」
「それに何故私が来るからってナルという人格が取り乱すの…」
「その答えは焦らなくてもすぐに教えるさ」
あまりにも不可解なことが多すぎて、訝し気な顔をした未来の質問を、樹がはぐらかした。