long dreamA


□勝てない理由
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幽助のパンチが頬にヒットしても表情を変えず、いまだ余裕綽々な仙水。


「君はオレに勝てない」


「ああ?」


ふざけた物言いをする仙水に、幽助はガンをとばし殴り掛かる。


しかし、いとも簡単に避けられてしまった。


「君が勝てない理由その1。オレには君の攻撃がなんとなく読める」


数々のキャリアを積み百戦錬磨の仙水と幽助の間には、経験値に雲泥の差がある。


戦いで培った勘が、仙水を反射神経より早く動かし致命傷を避けさせるのだという。


「ケンカの数なら負けてねー!」


筋金入りの不良・幽助が仙水の不意を突き、連続パンチをお見舞いする。


その名も内臓殺し。桑原が一週間食事ができなくなったという幽助の必殺技である。


「やれやれ。服が破けてしまった」


内臓殺しを受けてもなお、仙水は涼しい顔をしている。


露わになった彼の上半身は、思わず目を覆いたくなるほど傷だらけだった。


「あれは仙水が修行中に自ら負った傷だ。敵につけられたものなど一つもない」


驚いて声の出ない未来たちの横で、樹が誇らしげに呟く。


「少々本気を出すか」


仙水の作り出した何百もの霊気の球が、一斉に幽助を狙う。


いかんせん数が多すぎて、幽助は避けきれず身体中に攻撃をくらった。


「幽助…!」


負傷し倒れた幽助を心配し、未来が息をのむ。


「ふぬっ。まだまだ!」


「君が勝てない理由その2。君は多角的な攻撃にひどく弱い」


起き上がった幽助のタフさに感心した仙水だが、確実に敵の弱点を見抜く。


いつも一人で大勢の相手を敵に戦ってきた己と対照的に、幽助は一対一の戦いに慣れ過ぎているのだと。


「そして決定的な理由その3。霊気の全容量すなわち霊力値の差だ」


さきほど多くの霊気を放出したにも関わらず、また同じ数の霊気の球を作り出す仙水。


幽助には絶対にできない芸当である。


「君の霊力値を10とすると、オレは100だ」


その数字は、幽助を、蔵馬を、未来を。
仲間たち全員を、絶望に陥れた。



ぐぉぉぉおおぉぉ…



しかし、そんなシリアスな雰囲気を一瞬で払拭する気の抜けた音が辺りに響き渡る。


「く、桑ちゃん!?」


未来をはじめ裏男体内の者たちは、一斉にその腹の音の主の方へ視線を向けた。


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