long dreamA


□心の声
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切断された首から生えてきたのは戸愚呂兄の頭だった。


巻原の意識は既になく、美食家(グルメ)の能力で喰われた戸愚呂兄が逆に乗っ取ったのだ。


武術会の後、命からがら生き残っていた戸愚呂は仙水と出会い、手を組むことにしたという。


「ひゃははは、蔵馬、そんなに天沼を殺したのが悔しいか?顔と裏腹にハラワタ煮えくり返ってるみたいだなァ」


戸愚呂が高らかに嘲笑い、盗聴(タッピング)の能力で今度は蔵馬の心を読む。


「可哀想に、未来の目が見れねぇなァ。怖くて自分から話しかけられねぇなァ。未来と仲良しこよしだった天沼を卑怯な手で殺してよ」


その言葉に、ずっと冷静で動じなかった蔵馬の心が揺れたのを戸愚呂は見逃さない。


「おお〜どうした?随分と動揺してるみたいじゃねぇか。心が読めるオレには丸分かりだぜ」


「戸愚呂!やめろ!」


蔵馬を悪趣味なやり方でおちょくる敵に怒り爆発寸前の幽助が吠える。


「いたいけな小学生をよく殺せたよなァ。残虐な本性が出たな、ケケケケ」


しかし、幽助の咎める声などものともせず、さらに戸愚呂はエスカレートする。


「お前が危惧した通り、未来は幻滅したみたいだぜ。恐ろしいってよ、あっさりと残忍に天沼を殺したお前がな!」


「黙れ」


その一言に、場はしんと静まり返る。


寒気のするほど冷えた声を出したのは、蔵馬でも、幽助でもなかった。


「ふざけるな」


鋭い眼光を放ち言った未来に、戸愚呂は不覚にも言葉が出なくなってしまう。


―この声を発したのは本当に未来なのか?


幽助や飛影、御手洗、桑原、そして蔵馬ら仲間たちも、現状をすぐに飲み込むことができない。


「私が怒っているのは…許せないのは…蔵馬じゃない。天沼くんを助けられなかった自分自身と、天沼くんを利用して命を奪ったあんた達だよ」


普段の彼女からは想像もできないほど冷めた声と目つきで、真っ直ぐと戸愚呂を睨み未来が述べる。


「蔵馬に苦しい決断を強いた…あんた達だよ」


幽助たちの前で未来が初めて見せた、本気で怒った彼女の姿。


未来の静かな迫力に誰もが驚き、凝視し目を奪われる。


「残虐?残忍?馬鹿言わないで。蔵馬は誰よりも優しいよ」


じん、と蔵馬の目頭が、胸が熱くなった。


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