long dreamA
□スリーセブン
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天沼くん、寂しいの?―…
未来の問いに動揺した気持ちを払拭し、天沼がフードを脱ぎ捨てる。
「どうやらオレ様の出番だな」
ゲー魔王の台詞を真似た天沼が、玉座から立ち上がった。
「もう私の出番は終わったから髪はおろそう。また飛影に似合わないって言われるかもしれないしね!」
「…まだ根に持っていやがったのか」
しゅるっと髪をほどいた未来のツンツンした態度に、面倒くさいことになったと眉を寄せる飛影。
飛影は未来に髪を結んでほしくないと思っていたはずだ。何だかおかしな気分にさせられたから。
しかし今、どういうわけか自分は隠れてしまったうなじを残念がっている。
この矛盾した感情を、まだ飛影は理解できない。
「皆、よく聞いてくれ。正直なオレの意見だ」
そんな折、仲間に呼びかけたのはチームの参謀・蔵馬だ。
「天沼が実際のゲームのボスと同程度の強さなら、十中八九オレか海藤のどちらかが勝つ。だが天沼は未来の言う通り実際のボスより強いに違いない。幽助と飛影ではこのゲームで天沼に勝てない。そこで結論だが」
珍しく汗をかいた蔵馬が、淡々と努めて冷静に述べる。
「もしオレと海藤が負けた場合は一度ここを脱出することを考えよう」
自信がないと言っていいほど慎重になっている蔵馬の姿は、いかに天沼の能力が手強くやりづらいかを物語っている。
「あいちゃ〜クイズかァ。あんま得意じゃないんだよな〜」
スロットを回し並んだ“クイズ”“一般”“レベルG”の目に、天沼がぼやく。
「オレがやるよ。クイズは負けたことがない」
「海藤くん、頑張って!」
頭の良い彼なら頼りになると、未来は期待を胸に海藤へ声援を送る。
クイズは早押しの四択で、十問先に正解した方の勝利。ただし三回間違えるとその時点で敗北となる。
ゲームが始まるが、天沼は突っ立ったまま構えようとしない。
「ハンデをやるよ。五問くらいオレ黙って見てるから、答えていいよ」
自信たっぷり、余裕の表情で述べた天沼。
「ハンデ?必要ないと思うけど」
そう言った海藤は、驚くことに問題文が“アマゾ”の三文字しか提示されていない段階でボタンを押し、見事正解した。
「う、嘘!?」
「何ィ!?」
海藤の早業に、チームメイトである未来や幽助も驚き舌を巻く。
海藤によれば、全問題数の中で“アマ”から始まる問題は三つのみ。
彼は二万近くある問題と答えを全部その頭の中に記憶しているのだ。
しかし、当の天沼は対戦相手の驚異の実力に臆する様子が全くなく、海藤が五問連取する間もただモニター画面を見つめていた。