long dreamA


□狙撃手-sniper-
3ページ/6ページ


「もしかして飛影…誘拐された未来を探して助け出してたのか!?」


「邪眼の力でな」


正確に言えば助けに行ったものの未来と共に囚われの身となってしまったのだが、罰が悪くあえて言及しなかった飛影。


「かーっ!ナイスだぜ飛影!!」


「やめろ」


よっしゃ!とガッツポーズをとった幽助はその勢いで飛影の肩をくむ。


飛影は誘拐された未来を助けに行っていた。
刃霧に殺されそうになった自分を助けに来てくれた。


“オレたちがヤバい状況になった時、あいつは絶対来る!”
四次元屋敷で未来に告げた通りだったと、幽助は嬉しくなる。


「今未来は蔵馬と一緒にいるって言ったな」


「ああ。蔵馬といれば安全だろ」


飛影は蔵馬の強さに絶対の信頼を置いている。
だから一分の不安もなく未来を預けることができた。


蔵馬も未来が好きだと知った直後なら、恋敵である彼に彼女を任せることに躊躇したかもしれない。


だが、飛影は気づいたのだ。

他人は関係ない。
自分が、ただ彼女を想っていればいいと。
自分の気持ちさえブレなければいいのだと。


飛影は幽助の応戦に行く選択をした。
ならば、あの状況で未来を守る最善の策は自分ではなく蔵馬のそばにいさせることだっただろう。


自分のくだらないプライドと嫉妬で彼女を危険に晒したくなかった。


「じゃあ早いとこ蔵馬や未来たちと合流して桑原を取り戻さねーとな。無事だといいんだが…。一緒に来てくれるよな、飛影」


踏み出した幽助に、飛影も並ぶ。

飛影は蔵馬から未来を守る役目を引き継がなければならなかった。それに。



桑原。

顔を合わせばいがみ合う、飛影の口喧嘩相手。
妹の雪菜の前だと態度が急変し、しまりのない面をする相手。
今の関係で満足できない、未来が欲しいのだと、飛影が気づかされた相手。
蔵馬以外に唯一、飛影の未来への気持ちを見破った相手。

四次元屋敷での別れ際、確か自分は彼にめちゃくちゃ怒鳴られたはずだ。



そんな気に食わない相手のはずなのに、あのつぶれ顔が見られなくなるのは…なぜか、もっと気に入らない。



そう思っている自分がいることに、飛影は眉間に皺を寄せる。


「飛影、どうした?機嫌悪そーな顔して」


あ、それはいつものことかと幽助がおどける。


「大丈夫だろ」


すたすたと歩き続けながら、飛影が呟く。


「奴のしぶとさは異常だからな」


たしかに、と幽助が吹き出した。




奴に会ったら、あっさりと敵に捕まりやがって間抜けめ、とでも言ってやろうか。


何だとォ!?と掴みかかってくる桑原の姿が目に浮かんで、飛影はフ、と口角を上げると瞼を閉じた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ