long dreamA


□狙撃手-sniper-
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海藤や未来、蔵馬の言葉で一歩踏み出す勇気が持てた御手洗。


その頃、自転車で桑原を乗せた軽トラックに並走していた幽助は。


「お前、もうオレから逃げられないぜ」


「何ぃ…!?」


バイクにまたがり後方から追って来た刃霧により、行く手を阻まれていた。


「死紋十字斑。お前がどこへ逃げようとオレはその的をはずさない」


いつの間にか、幽助には両腕、心臓、腹部の四か所にダーツの的のような紋章が浮かび上がっていた。


刃霧が念をこめた四つの小石が、真っ直ぐに幽助の身体の的へと向かっていく。


「くっ」


「お見事。常に緊張して周囲に注意することだ」


全ての小石を素早くキャッチした幽助に、涼しい顔で刃霧が告げる。


「もうお前は寝ることさえ許されない。まあもっとも、穴は今日中、遅くとも明日には開くがな」


「なっ…」


残された時間は長くない。
刃霧の口から出た衝撃の台詞に、幽助はたじろぐ。


「あ!待ちやがれ!」


幽助が叫ぶも、刃霧は轟音をとどろかせバイクでどこかへ去っていった。


(どこだ!?どこから狙ってきやがる)


先ほどいた峠沿いの道路から、小脇の森に移動した幽助が周囲を警戒する。


そんな彼に大量の小石が飛んでくるが、パンチで全て粉々にしてしまう。


「出て来い!こんな攻撃はきかねえぞ!」


どこかで様子を伺っているであろう刃霧に呼びかけるも、現れたのは彼ではなく。


「あれは…何てとんでもねえもんを飛ばしやがる」


飛んできたのは無数の包丁。


まさかの刃物による攻撃を仕掛けてきた刃霧に、幽助は舌を巻く。


「くそったれ…ショットガン!」


一発でもくらったら致命的。ショットガンで包丁を粉砕した幽助だが、二発しくじった。


「くっ」


幽助が避けても、彼の身体めがけ軌道修正して向かってくる包丁。間一髪、逃した二本を指先で受け止める。


(あいつ…持久戦を狙ってきてやがるな?)


こうして攻撃を繰り返し、自分の疲れとミスを待つつもりなのだろうと幽助は読む。


(くっそ…ムカツクぜ)


真っ向から攻撃してこない相手が、こんなに厄介だと幽助は知らなかった。


苛立ちを募らせる幽助は、道路にこちらへ走ってくるタンクローリーを見つける。


「乗せてもらって一旦家に戻るか」


ところが、ある不可解な点に気づく。


―運転手がいない。


「マジかよくそったれー!!!」


信じたくないが、アレも刃霧の弾だ。


どうやら刃霧は、持久戦どころか一気に勝負をつけるつもりらしい。


どでかいタンクローリーに追いかけられ、幽助は森の中をひたすら走り駆け巡る。


(石油満タンのタンクローリーじゃ霊丸ぶっ放すわけにもいかねーし…!)


彼に残された選択肢は“逃げる”だけ。


しかし、刃霧はそれすら許さない。


「ヤロー…そこまでするかよ」


遠くの峠から拳銃でこちらを狙う刃霧の姿に、幽助は冷や汗を流す。


拳銃の照準は、石油の入ったタンクに違いない。


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