long dreamA
□希望の光
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「じゃあまずは御手洗の様子を見に行こうかね。まだ幽助の部屋にいるだろう」
「え、御手洗くん部屋にいるんですか!?じゃあ桐島くんたちも?」
「いや、彼ら三人には御手洗のことを事情聴取した後に記憶を消して帰宅してもらいました」
「幻海さん!永瀬さんに南野も」
マンションの階段を上がろうとしていた三人の元へ駆けてきたのは、盟王高校の制服に身を包んだ眼鏡の青年。
「海藤、どうして」
「南野が学校休んでたから何かあったのかと早退して来てみたんだよ」
高校の優等生二人がそろいもそろってサボリなんて、発覚したら教師は卒倒するかもしれない。
「海藤くん、大変なんだよ!桑ちゃんが敵に誘拐されちゃって。幽助と飛影が今追いかけてくれてる」
「その前は未来が誘拐されたしね」
ボソッと幻海が未来の台詞に付け加えると、そこへ階段を下りてくる少年が一人。
「御手洗くん!」
「あれ、君は…たしか本屋で会った」
「未来…解放されたのか」
御手洗はその場に未来がいることに意外そうだ。
そして、以前蟲寄市の本屋で出会った海藤の姿に驚くと、気まずそうに彼から目をそらした。
「桑原くんが攫われた。その理由を君は説明できるか?」
「…桑原は、ボクたちが必要として探していた次元を切り裂く能力者だったんだ」
静かだが確かな威圧感を醸し出す蔵馬に問われ、御手洗はためらいがちに口を開く。
「最初その能力者は異世界からやって来た未来に違いないと仙水さんは読んで、ボクと刃霧に未来を誘拐する命令を出したんだけど。…さっきボクの服に盗聴器が仕掛けられているのを見つけた。仙水さんは、ボクとの闘いで桑原が能力に目覚めたと知って攻めてきたんだと思う」
本当の標的(ターゲット)は未来ではなく桑原だったのだと、御手洗は語る。
「未来を攫ったのは全くの無意味だったってわけかい。あんたも災難だったね」
「あはは…」
幻海に同情の言葉を投げかけられ、未来が力なく笑う。
「そうだ、御手洗くん。ずっと聞きたかった…。どうして奴らの仲間になってしまったの?こんな恐ろしいことに加担するなんて」
「…ボクたち人間は生きてちゃいけない。死ぬべきなんだ。お前らだってあのビデオを見ればそう思うぜ」
昨夜からずっと気がかりだったことを未来が問えば、御手洗が至極真面目な顔をしてそう述べた。
あまりにも過激なことを言っているが、彼の目は本気だ。
「もしかしてそれは黒の章か?」
「ああ。あのビデオを見れば価値観変わるぜ。人間がどんな生き物かよく分かる。お前らはたまたま平和っぽいところで生きてるから知らないだけだ」
「黒の章?」
「人間の犯罪を記録したビデオらしいよ。最も残酷で非道なものを…」
蔵馬と御手洗の会話の横で、未来が先日霊界で得た知識を海藤に伝える。
「殺されるために並んでいる子供の列を見たことがあるか?その横に蹲っているウジ虫だらけの死体を。明日殺されることがわかっててオモチャにされてる人間を見たことあるか?それを笑顔で眺めてる人間の顔をよ」
段々と大きく、力強くなっていく御手洗の声。
「目の前で子供を殺された母親を見たことがあるか!?その逆は!?人は笑いながら人を殺せるんだ!!お前らだってきっとできるぜ気がついてないだけでな!!」
鬼気迫る御手洗の物言いに、誰も口を挟めず、その場はしんと静寂に包まれる。