long dreamA
□希望の光
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単身で敵を追いかけている幽助の元へと向かった飛影。
(飛影も幽助が心配なんだろうな。気をつけてね、飛影、幽助…!桑ちゃんを頼んだよ!難しいかもしれないけど天沼くんも…)
桑原と天沼の奪還の望みを飛影と幽助に託す未来。
(私も戦えて、皆の役に立てたらいいのになあ…。聖光気は使えるけど、戦力にならないし。こういう時、ほんと、)
「…悔しいな」
まさに自分が思っていた言葉が蔵馬の口から飛び出し、未来は驚く。
まるで心が読まれていたかのようなタイミングだ。
「こういう時、飛影の能力が羨ましくなるよ」
呟いた蔵馬が立ち上がるのに、未来も続く。
「飛影の能力が羨ましいって…蔵馬の能力も凄いじゃん!植物を操るなんてさ!幽助の霊丸も桑ちゃんの霊剣も、皆凄いよ!」
力説する未来に、そういうことじゃないんだよな、と密やかに蔵馬は笑う。
どこかで期待していた部分もあったと思う。
きっと、飛影が邪眼の力で攫われた未来を救い出してくれると。
先ほど飛影が任せると言ったのは、未来のことだろう。
自分は幽助の応戦に行くから、彼女を頼むと。
飛影の目には、迷いがなかった。
他人は関係ない。
ただ、自分は未来を好きでいる。
絶対に彼女を守る。
短い邂逅だったが、そんな意志が飛影からは感じられた。
蔵馬が自分も未来が好きだと彼に告げた時は、あんなに動揺しているように見えたのに。
(望むところですよ)
それでこそ飛影だ、と何だか少し嬉しくなって。
そんな己に、やれやれどこまで自分はお人よしなんだと蔵馬は呆れる。
飛影に限ってまさかと思いつつ、あの告白で彼が気を病んでやいないかと危惧していた蔵馬だったから。
(今日ほど飛影の邪眼が羨ましくなった日はないな)
期待と同時に覚えたのは、焦燥感。
誰よりも先に彼女の危機に駆けつけるのは、他でもない自分でありたかった。
その思いは今回叶わなかったけれど。
「未来、師範。オレたちも行きましょう」
今はただ、彼女の無事を噛みしめよう。
「うん!」
力強く未来が頷いて、心満たされる。
開通目前となった魔界の穴。
奪われてしまった桑原。
見せつけられた仙水の強さ。
正体不明だがツワモノ揃いであろう能力者たち。
事態はどれもこちら側にとって不利なのに、今の自分は怖いものなしだ、そんな気分にさせられる。
「蔵馬、何笑ってるの?」
「今なら誰にだって負けない気がするんだ」
自分にこんな単純な一面があったとは。
未来が無事戻ってきた。
その事実が、蔵馬に大きな勇気と強さを与えていた。
蔵馬にとって、未来は光だ。
眩しくて大切な、希望の光。
“お前の光はなんだ?”
今度凍矢に会った時は、その質問に胸を張って答えられると蔵馬は思った。