long dreamA
□希望の光
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拐われた桑原に、あっという間に見えなくなった幽助の背中。
辺りには慎重派である幻海と蔵馬の二人組だけが取り残されて。
束の間の静けさを破ったのは、囚われの身のはずだった彼女。
「師範ー!蔵馬ー!」
渇望していたその声、その姿に、蔵馬は一瞬時が止まったかのような感覚に陥る。
蔵馬と幻海のいる場所まで到着すると、飛影は姫抱きにしていた未来を地面に下ろした。
「未来!?無事だったのか!何があったんだい?飛影に助けてもらったのか」
まさかの未来の帰還に、幻海も目を見張り質問を畳みかける。
「はい。敵のアジトに連れてかれたんですけど、邪眼で飛影が探して来てくれて」
「見たところピンピンしてるようだが」
「大丈夫、元気いっぱいです!アジトにいたのも天沼くんっていう小学生だけで怖い思いすることもなかったです。すみません、心配かけてしまいました。自業自得です…」
罰が悪そうな顔をして頭を下げる未来。
こんな事態を招いたのも、軽率にメガリカライブへ行ったせいだと未来は反省していた。
「いや。あたしは大して心配してなかったよ」
「さすが師範、肝が据わってる〜って、それはちょっとショックです師範!」
「蔵馬に比べたらね」
先ほどからずっと黙ったまま、呆けたように棒立ちになっている蔵馬を顎でしゃくる幻海。
「蔵馬…?おーい?」
未来に呼びかけられて…蔵馬の瞳に生気が宿ったかと思えば、彼はその場にへなへなと座りこんだ。
「蔵馬!?」
「よかった…もう駄目かと…」
はあ〜と大きくため息をつき、蔵馬が額を抱える。
その姿は未来を動揺させ、そして胸を痛ませる。
―こんなに弱気な蔵馬の声、今まで聞いたことがなかった。
どれだけ心配をかけてしまったのか…痛感した未来はきちんと謝るべく、蔵馬と同じ目線になるよう自身もしゃがむ。
「蔵馬…心配かけてごめんね」
おずおずと未来が謝罪の言葉を述べると、しゃがんだまま蔵馬が顔を上げて二人の目線が絡む。
未来を見つめる蔵馬の顔は笑っていて。けれどどこか泣きそうで。
「本当によかった。未来が無事で」
それは、心からの言葉。
責めずに優しく笑ってくれた蔵馬に、未来の胸は熱くなった。
「蔵馬…ありがとう。本当にごめんね…」
同時に、チクチクと心をさす罪悪感。
もう本当に、軽率な行動はやめよう。
大事な人に、心配をかけて二度とこんな思いさせたくないから。
蔵馬の想いに触れて、自然とそう決意することができた。
「蔵馬」
珍しく頭上から降ってきた低い声に、蔵馬は顔を上げる。
「…飛影」
「オレは幽助を追う。後は任せた」
“任せた”
飛影が何を言わんとしているのか、蔵馬には分かった。
「分かりました。オレたちも後から行きます」
蔵馬の返事を聞き終わる前に、幽助に応戦するため高速移動する飛影は姿を消した。