long dreamA
□奪い合い
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自分を包む飛影の腕が熱い。
「飛影…?」
ドクンドクンと、胸の鼓動が鳴りやまない。
きっと飛影にも伝わってしまっているだろう。
「へえ、二人ってやっぱりそういう関係だったんだ」
ドキッと、未来の心臓が今までとは違った意味で大きく跳ねた。
「天沼くん!?」
飛影と抱き合っているところを見られた…
未来は顔が沸騰しそうなほど赤くなるのを感じた。
「怪しいとは思ってたんだよなァ。こんなところまで未来を助けに来るし」
さして動揺していない様子の天沼は、リビングにいる二人の横を素通りし、キッチンまで向かう。
蛇口をひねりコップについだ水をごくごく飲む天沼。どうやら喉が渇いて起きてきたようだ。
「オレのことは気にせずに、どうぞ続けて続けて」
「違うって…もう、飛影も何か言って…」
未来は自分にもたれかかっている飛影の身体を離し、彼の顔を覗き込むが。
「って寝てるし!!!」
すやすや寝息をたてている飛影に、未来の語勢は強くなる。
邪眼を使って疲れたのと、未来のぬくもりに安心して眠ってしまったのだろう。
(もー、なんなの飛影!いきなり抱きしめたと思ったら寝ちゃって…寝ぼけてたの?)
無駄にドキドキしていた時間を返してほしい、と思った未来だが、飛影の穏やかな寝顔を見ていると彼を責める気持ちは溶けていく。
(可愛い寝顔…)
武威戦の後も、飛影はこんな少年らしい平和な寝顔をしていた。
このまま寝かしてあげたい、そう思った未来が小さくあたたかい笑みをこぼす。
「じゃあ邪魔者は退散するよ」
「天沼くん…何か勘違いしてるよ」
ニヤニヤしながらリビングを立ち去る天沼は、未来の訂正の言葉も全く取り合おうとしない。
「あ、寝室二人に譲ろうか?オレはソファで寝るし」
「だから違うって!!」
極めつけに意味深な台詞を吐いた天沼に、未来は顔を真っ赤にする。
年下の小学生に翻弄されてしまう未来なのであった。