long dreamA
□飛影と蔵馬
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一方その頃。
「クソ、桑原と未来のやつどこ行きやがった…!」
蔵馬と共に豪雨の中、桑原と未来を探し回っている幽助だが、一向に二人を見つけることができない。
刻々と時間だけが過ぎ、募る焦燥感と苛立ちに舌打ちをする。
「もう街はあらかた探したぜ。どうする、蔵馬」
後ろの蔵馬に策を請い振り向いた幽助が、視界に入った彼の姿に二、三度瞬きを繰り返す。
雨に濡れ髪先から雫の滴り落ちる蔵馬のたたずまいは、息をのむほど美しい。
しかし、その瞳は幽助が今まで見たことのないほどひどく暗く陰鬱だ。
「蔵馬?どうした。大丈夫か?」
「…一回幽助の家に戻ってみようか。もしかしたら二人と入れ違いになっているかもしれない」
そう提案した蔵馬の声は落ち着いている。
よかった、いつもの蔵馬だとホッとした幽助は、彼に同意し自宅へと足を速めたのだった。
・・・・
蔵馬と共に自宅マンションに着いた幽助が目にしたのは、四人の人物を背負って玄関先で倒れ込んでいる桑原の姿。
三人は同級生である桐島、大久保、沢村とすぐに分かったが、縮れ毛のもう一人は幽助の知らない少年だった。
「桑原!」
桑原の発見に安堵する幽助だが、近くにもう一人の仲間の姿はない。
「どうした桑原、何があった!?未来は一緒じゃねえのか!?」
意識を失った桑原の身体をガクガクと幽助は揺さぶる。
すると、スッと蔵馬が穂のついた細い茎の植物を取り出し桑原の鼻先に近づけた。
「蔵馬それは?」
「気つけ薬のようなものだ。これで桑原くんが目を覚ましてくれるといいんだが…」
「ん…」
眠りから覚めた桑原が薄く瞼を開く。
「桑原!起きたか!一体何が…」
幽助が呼びかけるやいなや、カッと目を見開き覚醒した桑原が切羽詰まった表情で彼の肩を掴む。
「大変だ浦飯!!未来ちゃんが奴らに攫われちまった!正確に言や脅されて自分から行ったっていうか…人質となった沢村たちを助けるために」
「何っ」
未来の姿がなかったことで薄々予感はしていたが、幽助は聞かされた内容の衝撃に一瞬言葉を失う。
「未来はどこにいるか分かるか!?」
「オレは分からねえが、こいつに聞いてみてくれ。御手洗っていう、仙水一味の一人だ」
桑原が気を失っている縮れ毛の少年を指させば、蔵馬がまた先ほどの植物を取り出した。
しゃがんで御手洗に植物を嗅がせる彼の表情は、前髪で隠れて伺えない。
「おい…まだそいつ起きねえのか?」
しかし全く起きる気配をみせない御手洗に、幽助がしびれを切らして蔵馬に問いかける。
「諦めな。疲労がピークに達してるんだろう。今その薬は効かないよ。自然に起きるのを待った方がいい」
「婆さん!」
玄関のドアを開け中から出てきたのは、幽助の師匠である幻海だった。