long dreamA
□雨の訪問者
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「ぶわっはっはっは!あの女バカじゃねえの!」
刃霧と共にバイクに乗って去っていった未来を見送ると、御手洗が腹を抱えて笑いだした。
「お人よしのバカがホイホイ騙されやがって。大人しく引き下がるわけねえだろうが」
御手洗の意のままに巨大な液体生物は再度沢村たち三人をその身の中に取り込んだ。
「誰が最初に溺れ死ぬかなァー!?」
「てめえ!」
桑原が勇猛果敢に殴り掛かるも、小さな液体生物に殴られ行く手を阻まれる。
「未来ちゃんだって、予想はしてたと思うぜ…こうなることくらい…」
息も絶え絶えになりながら、何度も液体生物に立ち向かう桑原。
「でも、信じようとしたんだ。てめえにも人の心があるって…。未来ちゃん、心配してたぜ。てめえが奴らに脅され利用されてないかって…」
ほんの一瞬、御手洗の瞳が揺れる。
しかし、すぐに険しい表情に戻ると、彼は強く唇を噛んだ。
「そういうのが一番ムカつくんだよ!いい子ぶりやがって、偽善者が!口では何とでも簡単に言えるんだ!」
それは御手洗の魂の叫びだった。
助ける気なんかさらさらないくせに…!と、泣きそうに顔を歪ませて、悲痛な声を彼は絞り出す。
「未来ちゃんが信じたのはお前だけじゃないぜ」
“桑ちゃん、あとは頼んだよ!”
別れ際、そう迷いない瞳で告げた未来。
桑原なら三人を救い出してくれると信じ未来は単身、敵の元へ向かったのだ。
その期待を、未来の決意を、裏切るわけにはいかない。