long dreamA


□雨の訪問者
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「バカタレ!!」


帰宅した幽助は、玄関先で怒声と共に師匠・幻海に吹っ飛ばされた。


勢いよく外に放り出され、マンションの廊下に大の字になる。


「いってえな、ババアいきなり何すんだよ!」


「お前が守ってやるべき桑原と未来を放っておいたからだ!今桑原は霊力が使えんのだ。誰かが二人を援護してやらねばいかんだろう!」


「どうしたんですか?」


カンカンになって幻海が怒鳴っているところへ、学校帰りの蔵馬が現れた。


ぼたんから穴が広がるまであと一週間しかないこと、場所が入魔洞窟と判明したことを聞き、皆でこれからについて話し合おうと幽助の家に訪れたのだ。


「幽助のアホが桑原と未来を放置して今までパチンコに行ってたんだと」


「なっ…」


「こんな時にライブに行ったあいつらが悪いんだよ!オレはそこまで付き合ってられねえぜ」


蔵馬から非難めいた視線を投げかけられ、四面楚歌の幽助が喚く。


「それに敵も未来と霊力がなくなった桑原をわざわざ襲う理由ねえよ。心配しなくても大丈夫だろ」


「幽助、それは分からないよ」


静かに否定する蔵馬。


「未来は暗黒武術会で優勝商品となったくらいだ、奴らが狙ったっておかしくない。異世界からきた彼女は常に好奇の目に晒されている」


こんなことなら学校を休んでオレが彼女についておけばよかったな、と額を抱えた蔵馬が小さく呟く。


彼の声は落ち着いてはいたが、その心は未来の安否が気がかりで人知れずかき乱されていた。


「それに…桑原くんは霊力がなくなったんじゃない。眠っているんだ」


「眠ってる?」


「お前は闘っている時以外は本当にぼけーっとしとるな。この分だと敵の方が桑原の状態を分かってそうだ」


蔵馬の発言に疑問符を浮かべた幽助に、やれやれと幻海が溜息をつく。


「今度桑原に会ったら注意深く奴の気を探ってみろ。何かが生まれる瞬間の卵を見ているような高揚感を覚えるだろう。お前よりも数十日遅れてはいるが奴も殻を破りかけているのさ」


無事だったらの話だがな、と幻海が付け加えた。


「……」


たらりと幽助のこめかみに冷や汗が流れる。


桑原と未来は無事だろうか。最悪なケースが頭に過ぎる。


一時の怒りで二人を放置して…もしも永遠に失うことになってしまったら、悔やんでも悔やみきれない。


「ちくしょう!行ってくらあ!」


「オレも行く」


思い立ったら即行動。


桑原と未来の元に向かうため駆け出して行った幽助の後を、蔵馬が追ったのだった。


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