long dreamA
□水兵-seaman-
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「今日は私と桑ちゃんダメなんだ」
「はあ?なんでだよ」
「実はな…」
がさがさと桑原がポケットを漁って、チケットだろうか、長方形の紙を取り出す。
「今日メガリカの初来日ライブがあるのだ」
「ごめん幽助!そういうことだから!」
「なっ…」
にんまり顔で断りを入れる桑原と未来に、幽助とぼたんは二の句が継げない。
「馬鹿かてめーらライブごときで!」
「ごときとは何だメガリカをバカにしたら殺すぞオラ!」
「そうだそうだ!」
「未来…いつの間に桑ちゃんに布教されて…」
常識人だと思っていた未来がすっかりメガリカ熱狂的ファンと化していて、ぼたんはホロリと涙をこぼす。
暗黒武術会開催前、桑原に勧められベストアルバムを購入して以来、人知れず未来はメガリカに魅せられていたのだ。
「メガリカは私の元居た世界にはいないアーティストなんだよ!?もう今回を逃したら彼らのライブには行けないかもしれない…!」
未来がぎゅっと拳を握りしめながら、メガリカへの愛を熱く語る。
「たとえ明日地球が滅亡しようが私は行くから!」
「未来ちゃんよく言った!ファンの鏡だぜ!」
大きな声で宣言した未来に拍手を送る桑原。
付き合ってられんと幽助はしっしっと二人を追い払う仕草をする。
「あー、わかった。勝手に行きやがれ。こっちも霊力のないテメーらのお守りは真っ平だ」
「何だとォ!?テメーの力なんざダニのクソほどにも借りるかってんだ馬鹿野郎!」
「もし敵に襲われてもメガリカライブに行けたなら私は後悔はないよ!」
「はっ。知らねーぞ」
「あっ、幽助!」
屋上から立ち去ろうとした幽助を、未来が呼び止める。
「ていうか今日洞窟に行くのは危険だと思うよ!もっと準備してから行った方がいいよ!」
一刻も早くアジトに向かおうとしていた幽助は最もな忠告をする未来に反論できず、苛立ちが募る。
「うっせえオレの好きにさせろ!」
「一人で乗り込もうなんて馬鹿な真似しないでねー」
「オメーに言われたくねえよ!」
「人間界は終わりかもしんない…」
仲間割れを始めた彼らに頭を抱え、深い溜息をつくぼたんなのであった。