long dreamA
□医師-doctor-
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「…思ったんすけど、御手洗とかいうその少年、能力に目覚めたんじゃないですかね」
それまで沈黙し、何か考えこむようにしていた柳沢がおもむろに口を開く。
突然の頭痛と嘔吐は、ちょうど能力に目覚めた頃に身に覚えがあった。
「おそらくな。狙撃手(スナイパー)は御手洗を仲間に引き入れるため医師(ドクター)の元へ連れていったんだろう」
幻海がこくりと頷く。
「御手洗の能力は何なんだろうな…」
顎に手を当て思案する幽助の横で、未来は猛烈な後悔に襲われていた。
(御手洗くん、悪い奴らの仲間にされちゃったのかな…。ああー!!私が刃霧に任せずついていれば!)
当時の自分をぶん殴りたい衝動にかられる未来。
「お、おい!御手洗は刃霧に大凶病院に連れていかれたんだろ!?だったらここにその医師(ドクター)って能力者がいるんじゃねーか!?」
怯える室田が叫んだ瞬間、六人を“違和感”が包んだ。
「誰かが領域(テリトリー)を広げた!」
「医師(ドクター)か!?」
周囲を警戒し、キョロキョロと辺りを見回す未来と城戸。
「気をつけろ!どっから何がくるかわからねーぞ!」
幽助が皆に注意を呼びかける。
「痛っ…」
「いてっ!」
突如、手の甲へのチクリとした微かな痛みを柳沢と室田は感じた。
「な、何この虫!」
二人の手の甲に噛み付いている注射のような針を持った虫から、未来は目が離せない。
「さ、寒い…」
「うああ…」
虫に刺された所から体中に斑点が出没し、高熱に襲われた二人は苦しみはじめる。
虫は病原菌かウイルスの役目を果たしているのだろうか、ますます敵が医師(ドクター)である疑いは濃厚となった。
「聖光気が効かない…!」
未来が柳沢と室田に聖光気を当てるも、彼らが回復する兆しはみえない。
「気をつけろ!虫は二匹だけじゃないかもしれん」
幻海が言うが早いか、気づけばあっという間に六人は大量の虫に囲まれていた。
「このままじゃ全員あの虫にやられる!」
「能力者を見つけんと二人の病気は進むだけだ」
能力者を倒すしか、この現状を打破する方法はない。
幻海と幽助は、病院内にいる医師(ドクター)を探すことを決意する。
「城戸!婆さん!行くぜ!未来は早く病院から出るか、どっか安全そうな場所に隠れてろ!」
「わ、わかった!気をつけてね!」
未来の言葉を背後に聞きながら、幽助は病院の廊下を飛び出した。