long dreamA
□盗聴-tapping-
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「ひっでぇ有様だな…」
そこら中にのさばる無数の虫を睨んで、幽助が呟く。
四次元屋敷での一件から二日後。
幽助、幻海、未来、そして新たに仲間となった城戸と柳沢を加えた五名は蟲寄市の偵察に訪れていた。
「私が一ヶ月前に来た時より格段に増えてるよ〜」
うっとおしそうに虫を振り払い顔をしかめる未来。
虫は霊感のある者にしか見えない代物で、蟲寄市の人々が全く虫を気にもとめず過ごしているのは未来らにとって異様な光景であった。
まあ、見えていたら今頃パニックであろうけれど。
「蔵馬たちは大丈夫かなあ。いわば敵の本拠地に行ったんでしょ」
蔵馬、桑原、ぼたん、海藤たちは、魔界へとつながるという穴の中心部へ行っていた。
彼らの安否に未来は気を揉む。
「蔵馬は誰かさんと違って安心だ。ヘタなマネはせんよ」
「信用ねーなクソ!」
さらりと毒を吐く幻海に、誰かさんもとい幽助は苦い顔だ。
(飛影は、どうしてるのかな…)
未来が心配なのは蔵馬たちだけではない。
二日前に去っていってしまった飛影が気がかりで、未来はここのところずっと元気がなかった。
ふとした時に彼のことを考えて、気分が沈んでしまう。
「!?」
突然、一行は“違和感”を感じ取った。
それは誰かの領域(テリトリー)に踏み込んだことを意味する。
「誰かが近くで能力を使っているみたいだね…!」
「この店が怪しいっすよ」
城戸が麻雀屋を顎でしゃくる。
目と鼻の先にいる未知の敵の存在に、未来は緊張でゴクリと生唾を飲み込んだ。
「行くぜ」
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
勇猛果敢に店に足を踏み入れた幽助に、未来らも続いた。