long dreamA


□WILD WIND
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「ばーさんから話は聞いた」


「桑原!」


空気が凍てつき一同が静まりかえる中、現れたのは神妙な顔つきをした桑原だ。


「魔界の扉を開こうとしているヤツがいる!とてつもなくヤバくてデカイ穴だ」


ごくりと息をのみ、桑原が恐ろしい事実を告げる。


「…表情とカッコウが合ってねーよ」


「っせーな、わかってるよ!」


柳沢に制服を奪われていたためパンツ一丁の桑原に、幽助が冷静なツッコミを入れた。


「ま、詳しくはコエンマが直接説明してくれるよ」


幻海の言葉に呼応するように窓が開き、入室してきたのは…。


「はーい!呼ばれて飛び出てぼたんちゃんでーす!」


ぴょいっと櫂からおり、コエンマの部下で霊界案内人のぼたんが登場した。

非常事態とはいえ、いつもの明るさは変わらないぼたんである。


「ぼたん!久しぶり!」


「未来!元気してたかい?あ、魔界の扉のことはコエンマ様が今から話すからね」


久々の再会に女子同士で喜びあった後、ぼたんは霊界とつながるモニターを取り出す。

モニターには、霊界の自室で椅子に腰をおろすコエンマの姿があった。


『幻海の説明の通り、異常なスピードで魔界との穴が広がっておる。もう既に人間に影響が出ておるようだな』


コエンマの発言にうなずき、幻海が言葉を続ける。


「ここ一ヶ月くらいで30人くらいの人間が相談に来た。能力に目覚めたのは全て蟲寄市の人間だ」


「ああ、だから最近はお客さんが多くて…って、蟲寄市?」


一ヶ月前に奇妙な経験をした、未来にとって忘れがたい市である。


「オレたち三人は全員蟲寄市出身なんです。能力に目覚めたのは一ヶ月ほど前で、激しい頭痛と吐き気に襲われました」


城戸の話が、未来のある記憶と結びつく。


(…そういえばあの時、御手洗くんも…)


彼も能力に目覚めたのでは、と思わざるをえなかった。


『穴は蟲寄市にできているからな。魔界との穴のせいで、蟲寄市の人間に特殊な能力を持った者が現れておるのだ』


「…コエンマ。穴がさらに広がると、どんな影響が?」


蔵馬に問われ、コエンマが悩ましげにため息をつく。


『穴が半径1qを越えると…B級妖怪やC級妖怪が人間界を自由に行き来できるようになる』


「あの〜コエンマ様、その何級とかっていうくくり初耳なんですけど」


「オレもだ。説明しろコエンマ」


冷や汗をかきながらコエンマが述べるが、階級について無知な未来や幽助にはその深刻さが分からない。



『…B級妖怪とは戸愚呂クラスの妖怪だと考えて間違いない』



コエンマの一言はあまりにも彼らにとって酷であり、事態の恐ろしさを簡潔に伝えるには十分だった。



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