long dreamA


□禁句-taboo-
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ゲームが開始した。
瞬く間に一分が経過し、“あ”が言えなくなる。


「“い”もそろそろだぜ。今のうちにいっぱい言っておいた方がいいんでないかい?今9回くらい言ったかな?」


“い”を多用し、挑発めいた発言をした海藤。


「こ、こやつ…!」


なかなかやりおるな、と悔しげに唇を噛む未来の横で蔵馬は、


「お前がそんなにおしゃべりだとは思わなかったな。最初にはりきるとそのうちボロが出るぞ」


落ち着きを保ったまま海藤に告げる。


さらに時間が経つが、蔵馬には何も行動を起こす気配はない。


(蔵馬、どうやって勝つつもりなの〜!?)


蔵馬を信用しているが、彼の考えが全く読めない未来である。


「南野…何狙ってるんだ?」


「さてね」


海藤の問いを蔵馬がはぐらかす。


そしてついにあ行のみならず、か行も言えなくなった。
二行分言えなくなったのである。


「暇だね。しりとりでもする?」


この状況に飽きたのか、海藤がしりとりを提案し強引に開始する。


「しりとり」


次はキミだ、と言わんばかりに未来の方を顎でしゃくる海藤。


「り…リス」


そんな彼に、反射的に未来はしりとりを続けてしまう。


「…スリ」


未来までもがしりとりに参加したことに不安が拭えない蔵馬だが、とりあえず答える。


「リハビリ」


「り…り…リッチ」


「地理」


海藤、未来、蔵馬の順に地味に続いていくしりとり。


どんどん言えない文字は増えていくので、気は抜けない。


「倫理」


「り…」


また“り”が当たってしまい、未来は苦しむ。


(りんご…はダメ。理解もダメだ。理想…これもダメ!)


ぐるぐると思考する未来も、しばらく考えた後に思いつき。


「離脱!」


ポンッと手を打ち答える。


「釣り」


「利回り」


蔵馬と海藤はなんの迷いもなく言葉を口にするので、またすぐ未来の番。


「り…り…り…」


また“り”で終わる言葉を言ってきた海藤をキッと未来は睨みつけるが、当の本人は涼しい顔をしている。


(私をいじめてる〜!でもやっぱりこの人すごいな…)


海藤は毎回、“り”で始まり“り”で終わる言葉を一瞬で口にしていた。


“り”で終わる言葉を前の相手に言われているのは、未来だけでなく、海藤もなのだ。


(蔵馬もすごいけど、海藤くんもすごい)


あ行か行プラスさ行のいくつかの文字が使えないこの状況で、瞬時に答えるとはさすが言葉のスペシャリストだけある。


“り”で始まり“り”で終わる言葉を、凡人ではすぐに答えられないだろう。


「…立派」


やっと禁句(タブー)なしの“り”で始まる言葉を思いついた未来。


「パリ」


「厘取」


「また“り”…」


りんどり、と海藤が口にしたため、肩を落とす未来。


その時、ガタンと海藤が椅子から立ち上がった。


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